研究概要 |
本年度は研究実施計画に沿って、期待寿命の変化に基づく人口構造変化(出生率の低下、就学率の向上)が研究開発活動を通じ、長期的な経済成長率に与える影響について分析する経済成長モデルを構築した。具体的にはJones(1995)タイプの2期間世代重複、R&D型経済成長モデルにBecker(1960)タイプの家計による出生・教育選択を明示的に導入した。期待寿命の増加は、人々の教育投資のインセンティブを高め、高等教育への進学率の向上をもたらす。こうした就学率の向上は1人当たり人的資本の向上を通じ、研究開発活動、経済成長に正の影響を及ぼす。一方、期待寿命の増加は、人々の子供の数に対する需要を低下させる効果を持つ。こうした出生率の低下は人口水準の低下を通じ、総人的資本水準を低め、研究開発活動に負の影響を及ぼす。本研究では、期待寿命が低い経済(途上国)では、期待寿命の増加は長期的な経済成長率に正の効果をもたらすものの、期待寿命がすでに高い経済(先進国)では、さらなる期待寿命の増加は、長期的な経済成長率に負の効果をもたらす可能性があることを示した。また子育て費用に対する補助政策と教育投資に対する補助政策が経済成長に及ぼす影響についても考察を行い、教育投資に対する補助政策は常に成長促進効果を持つのに対し、子育て費用に対する補助政策は、条件によって、経済成長に負の影響を及ぼす可能性があることを示した。これらの理論的成果はDiscussion Paper,Rising Longevity, Human Capital and Fertility in Overlapping Generations Version of an R&D-based Growth Modelとしてまとめられた。
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次年度の研究費の使用計画 |
3月7日に資料収集と専門的知識の供与を受けるために、一橋大学経済研究所へ出張し、経済発展研究会主催セミナーにおける論文報告を聴講する予定であったが、当日の体調不良などの事情により、出張を中止し、翌年度に延期した。そのため資料収集のための国内旅費に要する費用(旅費、宿泊費、日当)相当分だけ翌年度に持ち越すこととなった。 翌年度に持ち越すこととなった54,294円については、資料収集のための国内旅費(交通費、宿泊費、日当)に再度割り当てる。また、翌年度分として請求した直接経費700,000円分については、当初の計画に沿って、資料収集、研究成果報告のための国内旅費に150,000円、学会参加のための外国旅費に300,000円、研究補助の人件費、謝金に100,000円、そして英語チェックの査読料や書籍などのその他項目や物品費に150,000円をそれぞれ割り当てる予定である。
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