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2014 年度 実施状況報告書

人口構造変化と技術進歩

研究課題

研究課題/領域番号 25870954
研究機関関西学院大学

研究代表者

田畑 顕  関西学院大学, 経済学部, 教授 (20362634)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワード人口構造変化 / 技術進歩 / 経済成長 / 社会保障制度改革
研究実績の概要

これまで多くの先進国は、高齢者の生活水準維持の観点から、高齢世帯の年金給付額が一定となるように勤労世帯が負担する保険料を調整するという「確定給付型」の賦課方式年金制度を採用してきた。しかし人口の高齢化は、勤労世帯が負担する保険料の高騰を招き、年金財政の持続可能性を危うくしている。そこで近年多くの先進国は勤労世帯が拠出する保険料が一定に保たれるよう年金給付額を調整する「確定拠出型」の要素を取り入れ始めている。本年の研究では昨年構築したR&D型経済成長モデルと比べて、企業の研究開発投資行動を大幅に簡略化した理論モデルを再構築し、社会保障制度改革に関する詳細な分析を行った。具体的には財の生産過程における経験の蓄積が技術進歩や生産性の向上をもたらす最も単純化された世代重複型内生経済成長モデルを用いて、「確定給付型」の賦課方式年金から「確定拠出型」の賦課方式年金への移行が経済成長に及ぼす影響について分析を行った。その結果、老齢人口比率が高くかつ「確定給付型」のもとですでに寛大な年金給付を行っていた経済ほど、こうした公的年金改革を行うことにより、「出生率の低下や長寿化によって生み出される人口の高齢化が経済成長に及ぼす負の影響」を緩和できる余地が大きいことを示した。また構築した理論モデルに基づき簡単なシミュレーション分析を行い、こうした年金改革が経済成長に及ぼす影響について定量的な分析も行った。私の知る限り「確定給付型」から「確定拠出型」への賦課方式年金の移行が経済成長に及ぼす影響について詳細に分析した理論研究は限られており、その意味で本研究の貢献は大きいと考えられる。これらの理論的成果はDiscussion Paper, "Population Aging and Growth : the Effect of PAYG Pension Reform" としてまとめられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究計画では、1. 昨年構築したJones(1995)タイプの2期間世代重複、R&D型経済成長モデルを拡張して出生促進・社会保障政策を導入し、これらの政策が経済成長や厚生に及ぼす影響について分析すること、2.1の理論研究に基づく実証研究、数値計算のために必要なデータベースおよびシミュレーションプログラムを作成すること、の2つを本年度中達成すべき課題として挙げていた。しかし昨年度構築したモデルは、企業の研究開発投資行動を厳密に定式化していたため、出生促進・社会保障政策に関して詳細な議論を行うと、分析そのものがあまりに複雑なものとなる恐れがあった。そこで当初の計画を修正し、企業の研究開発投資行動を簡略化した理論モデルを再構築して、社会保障政策に関する詳細な分析を行った。そのため1の理論モデルの拡張については、当初の目的を果たしたとは言い難いが、企業の研究開発投資行動を簡略化した理論モデルを用いて、社会保障政策に関して興味深い結論を導くことには成功した。その意味では概ね当初の研究の目的に沿った理論モデルの構築には成功したといえる。次に2.の実証・数値計算に関しては、数値シミュレーション分析については、いくつかの興味深い結果を導くことができた。しかし、構築した理論モデルの抽象度が高く、実証研究に必要な適切な代理指標を見つけることが難かった。そのため実証分析に関しては最低限必要なデータベースの作成は行ったものの、興味深い結果を得るには至らなかった。以上理論研究、実証研究ともに課題は残るものの、おおむね当初の研究目的の意図に沿った形で一定の結果を得ることができたとは言える。

今後の研究の推進方策

本年度は当初の研究計画とはやや異なる形ではあったが、それでも社会保障政策に関して一定の興味深い理論的結論を導くことはできた。しかし当初の計画により沿う形でR&D型経済成長モデルの枠組みにおいても、出生促進・社会保障政策に関して、興味深い分析結果を得るよう鋭意工夫を重ねていく予定である。

また研究計画に従い、昨年度開発したR&D型経済成長モデルを拡張し、人口構造変化(死亡率の低下、出生率の低下、就学率の向上)が、生産活動を通じた経験の蓄積(learning by doing)のみで技術が進歩する段階から、専門家による研究開発活動を通じた技術進歩が出現する段階への移行のタイミングに及ぼす影響について分析する経済成長モデルの構築を目指す。このような理論分析については、解析的なアプローチでは限界があり、主に数値計算の手法に頼ることとなる。そのためシミュレーションプログラムの作成に多くの時間を割く予定である。またこうした理論分析に基づく実証研究のために必要なデータベースの作成などにも取り組む予定である。以上、次年度についても、概ね、当初の研究計画に沿って研究を進めていく予定である

次年度使用額が生じた理由

3月に開かれた研究会で文具代等の支出を予定していたが、開催校の好意により文具等を準備していただいていたため、その支出を次年度に持ち越すこととなった。

次年度使用額の使用計画

翌年度に持ち越すことなった1525円については英文校正費、文具代などに割り当てる。また翌年度分として請求した直接経費700,000円分については当初の計画に沿って、資料集、研究成果報告のための国内旅費に150,000円、学会参加のための外国旅費に300,000円、研究補助の人件費、謝金に100,000円、そして英語チェックの査読料や書籍などその他項目や物品費に150,000円をそれぞれ割り当てる予定である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2015

すべて 雑誌論文 (1件)

  • [雑誌論文] Population Aging and Growth : the Effect of PAYG Pension Reform2015

    • 著者名/発表者名
      Ken Tabata
    • 雑誌名

      School of Economics, Kwansei Gakuin University, Discussion Paper Series

      巻: 125 ページ: 1-25

URL: 

公開日: 2016-06-01  

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