皮膚角層は生体の最外層を覆い、そこでアレルゲンなどの異物の体内への侵入や体内から過剰に水分が蒸散することを抑制する皮膚バリア機能を発揮する。経皮吸収性の医薬品や化粧品(医薬部外品)の開発研究において、経皮吸収のメカニズムを明らかにすることは非常に重要であるが、現在のところそれらの詳しい作用機序は明らかになっていない。当研究では種々の環境下における皮膚角層の構造と経皮水分蒸散量(以下、TEWL)や溶液吸収性の同時計測を通じて、角層構造と機能(バリア/吸収特性)の関係を明らかにし、バリア/吸収特性発現の機序を解明することを目的とする。 今回、シート状の皮膚角層を固定し、角層の外部溶液環境を自在に設定したり、TEWL測定を行いつつ同時にX線回折測定を実施することができる外部環境2分型試料セル(以下、試料セル)を独自に開発し、SPring-8(BL03XU、BL40B2)の高輝度な放射光を用いることにより、これらの同時温度変化解析を試みた。 試料セルに皮膚角層を固定し、TEWL値の温度変化解析を実施したところ、不連続的なTEWL値の温度変化曲線が得られ、当試料セルによるTEWL値解析が可能であることが分かった。またTEWL値と角層構造の同時温度変化解析を実施したところ、それぞれの変曲点温度の相関性が示唆され、角層の構造と水に対するバリア機能との新しい知見が得られた。 今回開発した試料セルを用いることで、TEWL測定しつつX線を照射することが可能となり、それらの同時温度変化解析が可能となった。当手法を用いることにより、水に対する角層のバリア機能と皮膚角層の構造との関係が明らかとなり、皮膚角層のバリア機能に関する新しい知見が得られたと考えている。
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