本研究では,組立作業の対象となる工業製品を構成する複数の部品の形状と,作業台上に置かれた個々の部品について想定される初期位置・姿勢の誤差の範囲から,そのような誤差をアライメント(整列)操作により吸収し,最終的に組み付けに必要な精度での把持を確実に達成することができるような,汎用的なロボットハンド(以下,汎用ハンド)の最適な機構と把持戦略を導出するためのアルゴリズムを構築することを目的としている.
平成27年度には,把持戦略の導出時に必要となる把持点位置の導出アルゴリズムに関する成果を,学術雑誌(システム制御情報学会論文誌)にて報告した.このアルゴリズムは,本研究で想定している汎用ハンドの機構によって,単一の三次元形状部品を把持して組み付け作業を行う際,部品に加わり得る外力・外モーメントに抗することができるような最適な把持点位置を算出するためのものである.このアルゴリズムにより,これまで把持戦略の導出時に試行錯誤的に決定していた把持点位置を,論理的に決定することが可能となった.加えて.同年度には,本研究における提案手法の妥当性を検証するための汎用ハンドならびにこれを制御するための制御装置の製作を行うとともに,計画した把持戦略を実現するための制御アルゴリズムを構築し,基礎的な動作実験を行った.
研究期間全体を通しては,汎用ハンドの機構と把持戦略の総合評価方法に基づき,複数の部品を対象とした最適な機構と把持戦略を導出するための要素技術を構築した.また,実機検証のための汎用ハンドシステムを構築した.今後は,要素技術の統合化ならびに実機実験による提案手法の妥当性の検証を行う必要がある.
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