研究課題/領域番号 |
25870958
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
藤原 明広 関西学院大学, 理工学研究科, 博士研究員 (70448687)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 遅延耐性ネットワーク / 群集誘導 / 機会情報サービス |
研究概要 |
群集誘導のための基盤技術を実現するために,平成25年度は混雑位置の判定と混雑位置を考慮した群集誘導アルゴリズムの開発に取り組んだ. 混雑位置の判別アルゴリズムとしては,GPSから得られる位置情報とBluetoothによるすれちがい通信から得られる端末の集中度を組み合わせることで,自分の周囲の混雑度を計算し,モバイル・ネットワークを介して混雑位置管理サーバへ情報送信するシステム構造を採用した.またサーバ側では,受信した情報を保持している地図情報と一緒に統合するシステム構造を採用した.また,混雑位置を考慮した群集誘導アルゴリズムとしては,各自がナビゲーション開始時に,現在いる場所と目的地の位置情報を送信してもらうことで群集の人数と目的地を入力にし,時間変化を考慮した道路グラフ上での最大流問題を最短経路誘導を基本にしたヒューリスティック・アルゴリズムによって解く手法を採用した. 更に,上記のアルゴリズムの遅延耐性化にも取り組んだ.混雑位置の判別アルゴリズムにおいては,混雑位置管理サーバにアクセスできない場合は,端末側で周囲の混雑度の情報とその情報を収集した時間を保持し,すれちがい通信により情報共有するようにした.この時,混雑度の情報の氾濫による情報共有にかかる消費電力の増大を避けるため,周囲の混雑度に応じて共有頻度をコントロールする方法を採用した.具体的には,周囲の端末のMACアドレスを参照し,周囲に常にいる端末よりも新しく来た端末と優先的に情報共有したり,混雑しているほど情報共有する端末数を減らすように工夫した.群集誘導アルゴリズムにおいては,位置情報サーバや周囲の端末と情報共有した混雑位置情報を利用し,混雑位置を避けた最短経路誘導を各端末が自律的に計算して行う手法を採用した. すれちがい通信の情報を活用したサービスを総称して「機会情報サービス」と呼び,統一的な観点からも考察した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究実績の概要で述べたように,群集誘導システムで用いるアルゴリズム開発の目処はついた.従って現在,次年度からの遅延耐性化された群集誘導の数値実験で扱う災害時避難誘導のシナリオを準備している.これまでの研究では,避難者全員が群集誘導を受けることを暗黙の仮定としていたが,災害時にはパニックになることが想定されるため,全員が群集誘導を受けるとは限らない.従って,群集誘導を受けない群集がどのように移動するかを考慮した移動モデルを考える必要がある. この移動モデルとして,多数の人が移動している方向へ同調行動をする多数決移動モデルを提案し,群集誘導が同調行動により避難者全体に波及する条件について理論的に研究した成果もまとめることができた.これを利用して群集誘導のシナリオを構築することを予定している.
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今後の研究の推進方策 |
今年度の成果として得られた群集誘導のためのアルゴリズムを,現在準備中のシナリオを元に数値実験を行い,その性能評価を行っていく.大規模なシミュレーションが行えるように,本質的な部分のみに計算を注力できるようなモデル化を行っていくことを予定している.例えば,群集を一塊で表現できるようにシミュレータのデータ構造を改善する.また,群集の状態と状態間遷移をモデル化し,これを移動モデルに反映できるように改善する. また,本提案システムをスマートフォンで動作するアプリケーションとして実装する研究においては,まず,Bluetoothを用いたすれちがい通信の機能をアプリとして実装していく.一方,ユーザの入力情報を反映した地図上の経路誘導を行うシステムは,既存のシステムにはないという課題がある.この課題を解決するために,ユーザの入力情報を考慮した経路誘導システムをオープンソース等を利用して一から構築する必要がある.地図上に入力情報を表示し,それを利用した誘導経路を表示するソフトウェアの実装も行っていく.
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次年度の研究費の使用計画 |
数値実験に使用するシミュレータは別の研究予算によって確保できた為に予算を使用する必要がなくなったため. 平成26年度からの所属の変更により,計算機ワークステーションを購入する必要がある.従って,残額をこれらに充てることで,今後の研究における数値実験に活用する.
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