本研究は、青年期後期の若者を対象とした質問紙調査によて、ネットいじめの生起と対応に関する心理学的諸要因の解明を目的とし、平成25年~27年度の3年の調査期間内に、1.ネットいじめ事象に関する一般的な理解と態度、2.ネットいじめ被害に対する心理的諸要因(リスク認知、被害不安、被害予防意識)、3.ネットいじめ加害に関する心理的諸要因(匿名性信念)の3点を明らかとし、相互関連性を検討するものである。平成27年度研究実施計画における主な目的は、1.平成26年度実施調査で明らかとしたネットいじめ被害及び加害に関する心理的諸要因の相互関連性の検証、及び2.平成25年度及び26年度実施調査の結果を統合したモデルの提案であった。以下に研究成果を報告する。 被害リスク認知は、被害不安と有意な正の関連(r=.661)が、また匿名性信念とは有意な負の関連(r=-.265)が認められた。また被害不安も匿名性信念と負の関連が認められた。さらに被害リスク認知と被害不安は、①ネット掲示板・SNS・ブログ上での活動、②ネット上での未知の他者とのチャットやアドレス交換、出会い系サイト等へのアクセス、及び③ネット上への自他の写真の掲載に関わる各被害に対する予防意識とそれぞれ有意な正の関連が認められた(被害リスク認知:r=.246; r=.258; r=.221; 被害不安:r=.268; r=.206; r=.164)。 これからの結果から、ネットいじめ被害に対するリスク認知は被害不安を生起させ、被害に対する予防意識を高めることが示唆された。一方、ネットの匿名性に関する信念は、被害リスク認知、被害不安の双方を低下させ、また被害予防への意識も低下させることが示唆された。
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