象徴天皇制については、現在的な問題とも関係しながら、これまでも数多くの研究がなされてきた。しかし、残された課題も多い。政治史研究と思想史研究・イメージ研究がそれぞれ別になされ、総体的に把握されていないこともその一つである。また、象徴天皇制形成期の研究が1990年代に集中的になされたものの、その後の研究ではその時期の検討はあまりされなくなり、またあっても枠内に留まった研究が多く、新しい事実解明などの課題も残っている。本研究では、新出史料を検討対象としながら、象徴天皇制を総体的に把握し、その歴史的過程を解明することを目的とした。 本研究では、新出史料を扱いながら、1990年代以降あまり研究が進展していない象徴天皇制形成から発展の段階に特に焦点を当てた。私もこれまでの研究でこの時期の問題について検討したが、政府・宮中の動向を確定することにこれまで注目しており、なぜそのような動きを起こしたのか、どのように社会の動きを観察していたのか、そして彼らの動向がどのように伝えられていったのかといった問題は未だ課題として残された。 これらの視点に注目しながら、象徴天皇制を検討することは、これまでの研究にもなく、独自の着目点だと考える。こうした方法論を採ることによって、新しい象徴天皇制研究のあり方を示すものと信じ、本研究課題を遂行した。 以上のような方法を実行することで、これまでの研究では明らかにできなかった新事実を解明し、象徴天皇制についての歴史を明確にすることができた。
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