麻布の表面への酸素プラズマ処理によって極小のクラックを発生させ、麻布への柔軟性付与と、さらに湯もみをおこなった場合の相乗効果を検討したところ、プラズマ処理による布の硬さの改善と、湯もみによる効果が確認できた。しかし、プラズマ処理時間によって染色性が低下する傾向が示唆された。前年度に染色性に関しては改善の傾向を確認していたが、今年度は最適なプラズマ処理条件をより詳細に検討したところ、条件によって染色性に違いが生じたため、現在も原因を解明すべく研究を進めている。 また、今年度は手織りで手作業により染色された貴重な近江上布を入手した。糸加工に使用されるこんにゃく糊が布の風合いにも影響を与えており、デジタルマイクロスコープによって繊維や糸の加工状態を観察するとともに、剛軟性についても機械で織られた近江麻布や越後上布などと比較したところ、一般的な糊剤よりもこんにゃく糊を使用した布は柔らかく糸の撚りの状態も異なり、独特の風合いに影響を与えていることがわかった。 一方、今年度実施予定であった八重山諸島での海晒しは、実験の遅れもあり実施することが叶わず、実験室的に可能な方法によって海晒しの色止めの効果を検討した。日光の有無及び異なる濃度の人工海水と蒸留水を用いて麻布の表面の色味の変化を測定したところ、海水の濃度が高く日光を浴びた麻布の色味が濃くなり、海晒しは色止めの効果と共に色味の鮮やかさにも影響を与えることが確認できた。 さらに、前年度は積雪の状態が悪くできなかった雪晒し実験を、今冬に新潟県にて実施した。しかし、雪更しによる色味の変化を確認するまでには至らなかった。今回、新潟県南魚沼市で開催された雪晒し体験会にも参加し、専門家から有力な情報を得ることもできたため、今後も雪晒しの効果について定量的に研究をおこない、麻の柔軟性及び染色性の改善と快適性素材の開発に向けて研究を進めていく。
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