研究課題
悪性胸膜中皮腫は、アスベストの曝露が発症の要因となることが示唆されているガンである。アスベスト曝露から悪性胸膜中皮腫の発症までの潜伏期間は、約40年と言われている。このため、全世界的にアスベストが1990年代まで使用されていたことで、悪性胸膜中皮腫の患者数は2010年から2030年代がピークとなることが予想されている。悪性胸膜中皮腫は極めて進行が早い潜行性のガンであり、また、悪性胸膜中皮腫に対する有効なガンマーカーも少ないため、治療を開始する段階ではすでにガンが進行しているケースが多い。しかしながら、既存の抗ガン剤では良好な治療成績は挙げられておらず、1年生存率が約50%、2年生存率が約20%とガンのなかでも予後が非常に悪い疾患となっている。以上のように、悪性胸膜中皮腫に対する革新的な抗ガン剤の開発が強く望まれる背景の中、研究代表者は悪性胸膜中皮腫に対する新規抗ガン剤の候補化合物として、21種類のナフトピジル誘導体を開発した。この中で悪性胸膜中皮腫細胞株に対して最も細胞死誘導効果を持つHUHS1015をスクリーニングし、悪性胸膜中皮腫モデル動物に対する抗ガン作用およびその生存率を検討した。HUHS1015は、同投与量の既存の抗ガン剤であるパクリタキセルと同等の抗ガン作用を持つことが判明した。また、パクリタキセル投与群における悪性胸膜中皮腫モデル動物の生存率は約30%であったのに対し、HUHS1015投与群における生存率は100%であった。これらの結果から、HUHS1015は悪性胸膜中皮腫に対し、既存の抗ガン剤と比較して同等の抗ガン作用を有し、なおかつ副作用がより少ないことが示された。
すべて 2014
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Cancer science
巻: 105 ページ: 883-889
10.1111/cas.12429