当該年度の研究成果として公表済みのものは、研究発表の要旨である「系列と歴史――プルードン『人類における秩序の創造』の論理と位置づけ」の1点のみである。但し、年度末までに、2点の論文および、翻訳出版草稿をほぼ完成させており、当該課題研究の成果として、間もなく公表される。 当該年度の研究計画は次のものだった。(1)プルードン思想とフランス・スピリチュアリスムの関係の解明の作業として、書籍化のプロジェクトを進めること、(2)タルドとギュルヴィッチの社会思想とプルードン思想の類縁性の解明を行い成果として仕上げること、(3)「68年の思想」とプルードン思想の関係の解明についての論文執筆、(a)(1)の研究に反映するためのプルードンの草稿の解読、(b)翻訳作業として、ギュルヴィッチの『プルードン』の完成と、プルードン『所有とは何か』の翻訳の遂行、以上である。 (1)については、当初計画の7割程度まで進め、特に重要な論点に関し、上述の2点の論文として仕上げた。一方は、(p)プルードンの社会契約論に対する態度の変遷、他方は、(q)プルードンの反神論を扱った。(2)については、ギュルヴィッチに関するもののみ、翻訳書の解説としての小論を執筆した。タルドについては、初期論文の解読を終えた。(3)については、研究成果の一部を草稿(p)に反映させた。なお、研究を遂行する中で、大きなテーマであることを確信して問いを再構成し、新たな科研費課題として応募、採択された。 (a)については、渡仏して解読する予定だったものが電子化されたため、渡仏を中止せずに解読、一部を、草稿(q)に活用した。(b)については、『プルードン』のうち、本文にあたる箇所の翻訳を終え、上述の通り、解説の小論を執筆した。付録を訳したうえで、刊行する予定である。『所有とは何か』に関しては、全5章のうち、1章の翻訳を終えた。
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