研究課題
足趾握力と変形性膝関節症(膝OA)との関係について、2年目は女性を対象としたデータ収集と解析を行った。データ測定・収集は国内の5病院で変形性膝関節症患者(OA群)と、奈良県内の2つの自治体主催の住民向けイベントにおいて下肢に手術歴・重篤な既往歴のない参加者(対照群)を対象に行い、OA群121名、対照群67名分のデータを解析した。解析項目は年齢、BMI、足趾握力、等尺性膝伸展筋力とした。結果は対照群に対してOA群は年齢が有意に高齢で(OA群:74.8±6.1歳、対照群:66.5±3.9歳)、BMIが有意に高値で(OA群:25.2±3.6、対照群:22.1±2.7)、足趾握力(OA群:6.6±3.2kg、対照群:13.3±4.8kg)と等尺性膝伸展筋力(OA群:13.4±4.1kg、対照群:24.6±5.4kg)が有意に低値を示した。多重ロジスティック回帰分析では年齢(オッズ比1.25、95%信頼区間1.08-1.46)、BMI(同1.75、1.34-2.30)、足趾握力(同0.76、0.62-0.93)、等尺性膝伸展筋力(同0.69、0.57-0.84)(すべてp<0.01)が選択された。OA群は対照群と比較して足趾握力が有意に低下しており、多重ロジスティック回帰分析でも足趾握力の低下と膝OAの発症との間に有意な関係がみられたことから、足趾握力の低下は膝OAの発症要因の一つである可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
女性に限定された解析結果ではあるが、研究開始当初の仮説を検証することができた。また成果報告として国際学会にてポスター発表によって研究結果を公に示すことができた。また本件に関する論文化の準備を進めることができている。
本研究結果を基礎データとして、動作解析装置や加速度計を用いた健常者および変形性膝関節症患者を対象とした実験研究による足趾握力と膝関節のバイオメカニクスとの関係の調査や平成27年度から科研費によって実施する、TKA術後患者の予後に足趾握力が与える影響についての研究へとつなげる予定である。
研究補助に対する謝金や英文校正等に充当を予定していたその他の経費において節減できたため、次年度使用額が生じた。
国際学会での成果報告のための旅費、学会参加費に充当する予定。
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