本研究は、ドキュメンテーション(子どもの言葉・活動の過程等が写真・ノートなど多様な手段で記録・集約されたもの)を中核的なツールとして位置づけ、専門家に過度に依存しなければならないパラダイムからの脱却を図る方法を検討するものである。平成27年度は主に下記の二つの検討を行った。 ①個人内差の大きい幼児1名、脳性麻痺児童1名、ASD児童1名の3名を対象として、数概念や計算学習の獲得プロセスを、実生活での直接経験との関係から明らかにした。この結果、子どもの認知特性や興味・関心などが生活内の「学びの場の偏り」をもたらすこと、活動と子どもとの間に生じている物理的あるいは認知的ギャップを子どもの身近にいる保護者が様々な手段を用いて埋めることで生活を通した学びが保障されていることが明らかにされた。 ②統合保育における個別の指導計画と特別支援学校における「遊びの指導」の二つについて、ドキュメンテーションやそれに類する記録を用いた実践の成果をまとめ、ドキュメンテーション活用によりもたらされるメリット・デメリットと活用状の注意点を検討した。 上記二つとこれまでの研究結果を総括し、特別なニーズのある子どもに対するドキュメンテーションを中核とした支援の在り方と方法についてまとめた。
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