研究課題/領域番号 |
25870978
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研究機関 | 吉備国際大学 |
研究代表者 |
黒宮 亜希子 吉備国際大学, 外国語学部, 講師 (50435038)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 小地域ネットワーク活動 / 中山間・離島地域 / 互助・共助 / 地域福祉 / 見守り活動 |
研究実績の概要 |
近年,人口の減少および高齢化や単身世帯の増加に伴い,日常圏域で取り組む,住民の「要援護者の見守り」や「住民の集いの場づくり」の必要性は日々高まっている.しかし現実には,活動の立ち上げた後の持続性・継続性が課題となっている.本研究の目的は,急速に人口減少と高齢化が進む中山間及び離島地域における小地域ネットワーク活動の現状と効果的な継続とはいかなるものかを実証的に明らかにすることである. 小地域ネットワーク活動の具体的な例としては,個別援助としての「近隣住民による要援護者の見守り(活動)」が挙げられる.集団援助としては,「ふれあい・いきいきサロン活動」が代表的である.いずれも活動内容は住民の主体性に任されており,地域ニーズにあった実に多様な活動が小地域ネットワーク活動といえる.小地域ネットワーク活動の重要性が叫ばれている背景は,急速な人口の高齢化と世帯の単身化が背景にある.特に中山間及び離島地域においてはその傾向は顕著であり,山間部や離島では高齢者の独居世帯の割合が著しく高い. 本研究は,小地域ネットワーク活動の阻害要因と促進要因を定性的研究・定量的研究の双方のアプローチから検証し,「中山間及び離島における小地域ネットワーク活動の効果的な継続のための実践モデル」の構築を行うことまでを射程としている.そのため,中山間及び離島地域において展開されている小地域ネットワーク活動(H26年度は特に見守り活動を中心に)の,1.実態把握,2.促進・阻害要因の探索作業,を元に,3.効果的な活動継続に対しての具体的な支援・アプローチの提示を行うことまでが3年間に渡る研究計画である.研究2年目の平成26年度は,中山間地域を含む市町村を対象とし,特に 2.促進・阻害要因の探索と検証作業に取り組んだ.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究全体の進捗はやや遅れてはいるが確実に成果は上がっている.研究計画2年目である平成26年度においては,主に以下の研究成果が得られた. 1.岡山県内の中山間地域を含むA市B地域における,小地域ネットワーク活動(特に見守り活動)に実際に関わる地域住民(主に民生委員,福祉委員ら)を対象とした質問紙調査の結果を元に,その成果を論文としてまとめた. 2. 岡山県内の中山間地域を含むA市における,住民の小地域ネットワーク活動に関わる専門機関(市町村社会福祉協議会,地域包括支援センター)を対象としたインタビュー調査の結果をデータ化し,その研究成果を学会(日本社会福祉学会)にて発表した. 3.岡山県内のC市において,ふれあい・いきいきサロン活動に取り組む住民を対象としたインタビュー調査の研究成果を図書(英文図書)に掲載した. 以上より,小地域ネットワーク活動のうち,特に「地域内での見守り活動」における促進・阻害要因が明確化され,これを元にH27年度に実施予定の定量的研究における分析モデルの土台が構築された.
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今後の研究の推進方策 |
中山間及び離島地域において展開されている小地域ネットワーク活動の,1. 実態把握(効果・課題),2. 活動の促進・阻害要因の探索については,対象者(地域住民,専門職)への質問紙調査やヒアリング調査から得られたデータを精査し,論文または学会発表を行ったことで,研究2年目までで一定の成果が得られた. 研究3年目となる平成27年度には,岡山県内の離島地域を含むD市において住民及び専門機関へのヒアリングを今後さらに重ねた後,定量的研究に用いる分析モデルを確定する.その後,岡山県内の中山間・離島地域を含む地域を対象とした質問紙調査(サンプリングを現在検討中)を実施する.調査対象者は,民生委員・福祉委員および専門職(地域包括支援センター,社会福祉協議会ほか)らである.その後,定性的・定量的,双方の研究成果を元に,「小地域ネットワーク活動の効果的な継続のための実践モデル」を提示する.最終的には,調査協力者等へ配布可能な報告書としてまとめることを研究予定最終年の目標とする.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた主な理由は以下3点である.第1の理由は,当初H26年度の研究を進めるにあたって支出を予定していた人件費が不要であったことが挙げられる.質問紙調査実施後のデータの入力作業について自ら手作業で入力したことで人件費を必要としなかったこと.また,テープ起こしに人件費が必要となるインタビュー調査について,離島地域のみ調査実施がやや遅れていることで支出がなかったことがその理由である.第2の理由として,H26年度に購入を予定していた統計処理ソフトIBM SPSS一式のうち,SPSS Statics Base と SPSS AMOS のみH25年度段階で購入したためである.第3の理由として,H26年度に実施した質問紙調査は集合調査であったため,質問紙の送付に郵送料が不要であったためである.
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次年度使用額の使用計画 |
H26年度に支出がゼロであった人件費については,H27年度予定のインタビュー調査実施にあたり,データ整理(テープ起こし)の人件費として必要となる.また,質問紙調査の分析に際しても,IBM SPSS の分析オプション SPSS Exact Tests らが今後必要となるため,次年度(H27年度)支出を予定している.質問紙の郵送に関して,集合調査で実施が不可能な市町村については郵送料を使用しての質問紙調査が今後必要となる.
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