被相続人と実質的な財産関係および人間的関係を築いた者を配慮する相続制度の構築を検討した。最終年度は、相続における内縁配偶者の法的地位の問題を立法論および解釈論の両面から検討した。 立法論の面では、現在進行中の相続法改正の議論およびこれまでの相続法改正における内縁配偶者の法的地位についての議論を検討し、内縁配偶者に相続人に準じた保護を与えることに対する障壁になっているのが、法律婚主義から手続の煩雑さの問題に移り変わってきていることを明らかにした。現在進行中の相続法改正の議論において、被相続人の財産の維持・増加に貢献した非相続人を考慮する案が検討されているところ、同議論では手続の煩雑さの問題がかなりの程度解決されており、非相続人の貢献を相続において評価するべきとする社会的要請が高まっていることから、内縁配偶者を含める形で非相続人の貢献を評価する立法が望ましいとの結論を提示した。 解釈論の面では、民法768条を内縁の死亡解消に類推適用することの可否を検討した。内縁配偶者を相続において保護する立法的対応はなされないままであるのに対し、解釈論上は内縁配偶者を相続において保護することの正当性が認められているという状況を明らかにした。そして、財産分与規定と配偶者相続権の規定の適用領域を分ける民法の体系を重視する観点から否定説をとる判例・学説の本質的な根拠は、内縁の死亡解消時に生存内縁配偶者に財産分与請求権を認める場合の手続の煩雑さであるとの分析を示した。手続の煩雑さは、相続法においては画一的解決の要請という観点からこれまで重視されてきたが、この画一的解決の要請は相対化されうる考え方であり、内縁配偶者の相続における保護の正当性をこれによって阻止することはできず、民法768条の内縁の死亡解消への類推適用は肯定されるべきであるとの結論を提示し、成果を所属大学の紀要に発表した。
|