最終年度では、第1に2015年8月に早稲田大学にて開催されたEast Asian Game Theory Conference 2015(国際学会)において、阿武秀和氏との共同研究である「Strategy-proofness and the random dictatorship rules」について研究発表を行なった。この研究では、人々の選好を考慮に入れながら、確率的なくじを用いて公共財の選択を考察する問題を分析している。この研究発表を通じてこれまで分析してきた公理のうち、効率性を限りなく弱めた公理について新たな知見を得ることができた。 第2に2016年3月に5日間、ロチェスター大学のWilliam Thomson教授のもとへ研究訪問を行なった。その際にThomson教授との共同研究である「Monotonicity properties for the adjudication of conflicting claims」を前進させた。この共同研究においては、各人の権利の大きさ(非負の実数)が、配分可能な総量(非負の実数)を超えている時に、どのように配分を行なうべきかを考察する問題を分析している。これまで文献で取り扱われてこなかったが重要と考えられる種々の公理を提案し、それらの公理について理論的に考察した。特にこの研究訪問を通じて、2人又は3人から任意の人数へのリフティング(整合性と呼ばれる公理による、公理適応範囲の拡大)や公理間の論理関係に関して、新たな結果を得ることができた。 第3に無限には分割することができない財を複数個受け取るケースにおいて、確率的なくじを考慮し望ましい配分方法を考察する問題に対して、新たな公理との両立可能性についての検討を行なうことができた。 研究期間全体を通じて、国際学会(2回)、国内大学セミナー(2回)における研究発表、国内外の大学への研究訪問等を行なうことによって上述の研究に対するコメントを多く受けることができ、研究を大きく前進させることができた。研究成果は、順次国際専門誌へ投稿予定である。
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