研究課題/領域番号 |
25870981
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 福山大学 |
研究代表者 |
中浦 嘉子 福山大学, 生命工学部, 助教 (30412315)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 餅 / 煮溶け / 澱粉 / モチ米 |
研究概要 |
雑煮、鍋料理等の調理において餅を煮る際、餅が溶けて小さくなり、汁を濁らせる現象「煮溶け」があるが、その詳細は不明である。そこで本研究では、餅の煮溶け性について、1. 数値化して評価する手法の開発、2. モチ米品種とその主成分である澱粉の理化学的特性との相関解明、3. 餅成形後の保存期間及び保存温度が及ぼす影響と澱粉の理化学的特性との関連解明を目的とする。 1. 餅の煮溶け性の数値化 餅の煮溶けでは、(1)餅が小さくなる、(2)汁が濁る、(3)汁の粘度が増す、の3点が問題である。餅が小さくなる現象は餅の煮溶け前後の重量変化、汁が濁る現象は分光光度計による汁の濁度測定、汁の粘度増加は、オストワルド型毛細管粘度計による粘度測定で、それぞれ数値化し、評価可能とした。また、餅から汁に溶出する糖類の評価手法としては、フェノール・硫酸法による全糖量定量が妥当であることを示した。 2. モチ米澱粉の特性 (独)農研機構の各地域農業研究センター及び作物研究所で栽培されたモチ米29試料米と、国内作付量が最も高いヒヨクモチ(市販品)との計30試料米から澱粉を抽出し、その特性を明らかにした。ヨウ素吸収曲線及び中圧ゲル濾過分析の結果、いずれの試料米もアミロースを含まないことを確認した。アミロペクチンの短鎖画分/長鎖画分比率は1.9 ~ 3.1に分布したが、殆どの試料米は平均値の2.5付近の値を示した。陰イオン交換クロマトグラフィー、平均鎖長、β-アミラーゼ分解限度、DSCの各測定の結果、アミロペクチン側鎖長分布には、多少の差異がある試料もあったが、多くの試料において大差は認められなかった。また、RVAによる熱糊化時の粘性挙動測定の結果、老化の指標と考えられるセットバック値に大差は無かったが、粘度上昇開始温度については、アミロペクチン側鎖長が長い程、高くなる傾向が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は、1. 餅の煮溶け性を数値化して評価する手法の開発及び2. 餅の煮溶け性におけるモチ米品種とその主成分である澱粉の理化学的特性との相関解明に着手した。 餅の煮溶け性を数値化して評価する手法の開発については、ほぼ完了した。食味低下を招く煮溶けの問題点(1)餅が小さくなる、(2)汁が濁る、(3)汁の粘度が増す、の3点について数値化手法を検討したところ、餅が小さくなる現象は餅の煮溶け前後の重量変化、汁が濁る現象は分光光度計による汁の濁度測定、汁の粘度増加は、オストワルド型毛細管粘度計による粘度測定で、それぞれ数値化し、評価可能とした。また、餅から汁に溶出する糖類の評価手法としては、フェノール・硫酸法による全糖量定量が妥当であることを示した。以上より、上記4手法を活用して餅の煮溶け性を数値化して評価することが可能となった。 餅の煮溶け性におけるモチ米品種とその主成分である澱粉の理化学的特性との相関解明については、計画通り、一部完了した。煮溶け性の要因解明の糸口として期待されるモチ米澱粉の理化学的特性解明については、平成24年産モチ米30品種全てから澱粉を精製し、7項目(①ヨウ素吸収曲線、②中圧ゲル濾過法による澱粉の単位鎖長分布測定、③HPAEC-PAD法によるアミロペクチン短鎖領域における側鎖長分布、④平均鎖長、⑤β-アミラーゼ分解限度、⑥示差走査型熱量計(DSC)による澱粉の糊化温度及び糊化熱量、⑦RVAによる熱糊化時の粘性挙動)の理化学的特性を明らかにした。また、平成24年産モチ米30品種の餅の煮溶け性の評価は、上記確立した4手法を用いて引き続き進行中である。 以上の理由から、現在までの達成度を、おおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
米澱粉の特性は、品種のみならずイネの登熟温度によっても影響を受けるため、平成24年産米のみならず25年産米についても継続して澱粉の理化学的特性解明及び餅の煮溶け性評価を行う必要がある。そこで、平成26年度は、平成25年度と同様に餅の煮溶け性におけるモチ米品種とモチ米澱粉の理化学的特性との相関解明を行う。すなわち、平成25年に(独)農研機構の各地域農業研究センター及び作物研究所で栽培されたモチ米及び国産作付量が最も高いヒヨクモチ(市販品)から澱粉を精製し、その理化学的特性を明らかにする。更に、平成25年度に開発したモチの煮溶け性を数値化して評価する手法を用いて、平成24年及び25年産モチ米の煮溶け評価を行う。更に、時間的余裕が得られるようであれば、餅成形後の保存期間及び保存温度が煮溶け性に及ぼす影響と澱粉の理化学的特性との関連解明にも着手する。
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次年度の研究費の使用計画 |
モチ米澱粉の理化学的特性の一つであるHPAEC-PAD法によるアミロペクチン短鎖領域における側鎖長分布解析に使用する予定であった当研究室所有のDIONEXクロマトグラフィーが使用不能となったことから、急遽、同後継機種を所有する(独)農研機構 食品総合研究所にて解析を行うこととなった。そのため、当初の予定には無かった出張旅費が必要となったため、消耗品費およびその他の経費を最小限に抑えたことが原因と考えられる。 市販のモチ米購入を始め、分析試薬、ガラス器具等を購入するための消耗品費として使用する。また、上記研究を年度内に遂行するために、実験補助者1名を5ヶ月間雇用するための賃金として使用する。更に、平成25、26年度の研究成果を学会発表するために、国内旅費及び学会参加費として使用する他、HPAEC-PAD法によるアミロペクチン短鎖領域における側鎖長分布解析で用いていた当研究室所有のDIONEXクロマトグラフィーが使用不能となったことから、これを所有する研究施設への短期出張旅費として使用する。
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