研究実績の概要 |
本研究では、パーフルオロアルキル試薬によるフルオラス相互作用を利用した生体関連物質の選択的抽出法の開発を試みている。前年度までに、4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,11-heptadecafluoroundecylamine試薬をイオンペア剤として用い、低分子リン酸基含有化合物(ヌクレオチド類)を、誘導体化を行うことなく、パーフルオロアルカン類などフルオラス溶媒中に選択的に抽出し得る方法論の開発とその基礎的検討を行った。今年度は、さらに本法の詳細な条件検討を行った後、本法の実試料測定への有用性を検証すべく、適当な細胞試料中におけるヌクレオチド類の選択的抽出を試みた。抽出条件については、前年度に構築した条件をもとに、イオンペア剤濃度、緩衝液濃度及びpH、フルオラス抽出溶媒の組成など詳細に行ったところ、前年度までに若干問題のあったジリン酸類・トリリン酸類の回収率を向上させることに成功した。また、ヌクレオチド類縁体(非リン酸系化合物、アデノシンやcAMPなど)に本法を適用したところ、それらは抽出されなかったことから、本法のリン酸基含有物質に対する選択性を確認することができた。さらに、ヒト乳がん由来細胞であるMCF-7及びMCF-10A細胞に本法を適用した。その結果、それぞれの試料中におけるヌクレオチド類の抽出が可能であり、本抽出法を適用したときのクロマトグラムと、本法を適用しなかった場合のものとを比較したとき、試料由来夾雑物ピークの減少を確認できたことから、本法の実試料測定に対する有用性をも確認することができた。
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