研究実績の概要 |
本研究では,フルオラス相互作用(パーフルオロアルキル基同士のみが持つ特異な親和性)を利用したヌクレオチド類の選択的抽出法の開発を行った。フルオラス試薬として,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,11-heptadecafluoroundecylamine(HFUA)を用い,それをイオンペア剤とするヌクレオチド類のフルオラス溶媒への抽出に成功した。前年度までに,AMP,ADP,ATP,GMP,GDP及びGTPの6種のヌクレオチド類を対象として基礎的検討を行い,さらにヒト乳がん由来細胞であるMCF-7及びMCF-10Aを試料として,それらに内在するヌクレオチドの定量を行うことで,本法の有用性を証明した。本年度は,ヌクレオチド類の対象を18種まで拡張し,更なる検証を行った。対象としたヌクレオチド類の18種全てにおいて分析法バリデーションを実施し,十分な再現性をもってそれらを測定できることを証明した。またさらに,本法を,種々の白血病由来細胞試料(MT-2、HL-60及びJurcat)へと適用し,対象としたヌクレオチドの定量を行ったところ,いずれの細胞試料においても良好に測定を行うことが可能であった。本測定結果に,主成分分析を施したところ,ヌクレオチドの濃度変化から,細胞間の識別が可能であることが判明した。 以上の結果より,本研究にて開発した方法が,試料中ヌクレオチドの選択的分析を可能とすること,ならびにその分析結果を用いることで,メタボロミクス的解析が可能であることを証明することができた。
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