研究課題/領域番号 |
25870999
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
田尻 恭之 福岡大学, 理学部, 助教 (90441740)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ナノ粒子 / マルチフェロイック物質 / 結晶構造解析 / 磁性 |
研究概要 |
本研究の目的であるマルチフェロイック物質ナノ粒子の電気磁気サイズ効果を明らかにするために,マルチフェロイック物質RMnO3 (R=Dy, Tb, Gd,Eu)のナノ粒子の合成を行った.物性研究を遂行するうえで良質な実験試料を合成することは最重要である.そのために各物質のナノ粒子の合成に成功すること,およびその合成条件の最適化を行うことをH25年度の研究計画の主とした.本研究では,ナノ粒子のサイズ制御のため,および粒子の凝集を妨げ粒子間相互作用の影響を受けることなく各ナノ粒子の物性を明らかにするために,ナノ粒子をメソ多孔体の細孔中で合成する手法を用いている. DyMnO3ナノ粒子に関しては,これまでの研究結果を基に約7~15 nm程度の粒子サイズを持つナノ粒子を合成し,それらの結晶構造と磁性のサイズ依存性と結晶構造と磁性の相関を明らかにした.その結果を学術論文に投稿し発表した. 新たにRMnO3 (R=Tb, Gd, Eu)ナノ粒子の研究を行うためにメソ多孔体の細孔中での各物質のナノ粒子の合成を試みた.直径が約7nmの一次元細孔を持つメソ多孔体を使用しナノ粒子の合成を行った.ナノ粒子合成条件を明らかにするために,合成条件を変化させ複数の試料を合成し,放射光を用いたX線回折実験による結晶構造解析を行った.X線結晶構造解析結果は,GdMnO3とTbMnO3ナノ粒子の合成に成功したことを示唆するものであった.また,X線構造解析の結果を基にナノ粒子の合成条件の最適化と結晶構造の解明を現在進めている.合成に成功したGdMnO3とTbMnO3ナノ粒子の磁気測定を行った.各ナノ粒子はバルク結晶とは異なるナノ粒子特有の磁性を示しており,それらの詳細な測定と解析を進めている.また,結晶構造解析および磁気測定の結果を基にナノ粒子合成条件の最適化を進めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
DyMnO3ナノ粒子の研究は順調に進めることができ,約7~15 nm程度の粒子サイズを持つナノ粒子を合成し,それらの結晶構造と磁性のサイズ依存性と結晶構造と磁性の相関を明らかにし,学術論文を投稿し掲載された. H25年度の研究計画の1つにEuMnO3,GdMnO3とTbMnO3のナノ粒子の合成と合成条件の最適化としていた.GdMnO3とTbMnO3ナノ粒子の合成に成功したが,合成条件の最適化が順調に進んでいない.得られたGdMnO3とTbMnO3ナノ粒子の磁気測定を行い,バルク結晶と異なる振る舞いを観測した. ナノ粒子合成の成功および合成条件の最適化の判断は,X線結晶構造解析結果を基にしている.ナノ粒子のX線結晶構造解析を行うには,実験室系装置ではシグナルを得ることが困難であるために研究計画に挙げているように放射光を用いた実験を行う必要がある.放射光施設(高エネルギー加速器研究機構)にてH25年度9月以降(H27年7月まで)の実験課題を申請し採択されたが,希望したビームタイムが配分されず実験を計画通りに行うことができていないため,ナノ粒子のX線結晶構造解析を進めることができていない.よって,合成条件の最適化および作製した実験試料の評価(研究対象物質のナノ粒子の存在の有無,粒子サイズの見積もり)や結晶構造解析が計画よりやや遅れている.磁気測定などの物性測定もH25年度は装置使用がやや困難だったため多少遅れが生じている.
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今後の研究の推進方策 |
現時点では, X線結晶構造解析による実験試料の評価およびナノ粒子合成条件の最適化を上記のように計画通りに進めることができていない.よって,現在実験課題が採択されている高エネルギー加速器研究機構以外の放射光施設であるSPring-8と九州シンクロトロン光研究センターでの実験課題の申請を新たに行い,放射光を用いたX線結晶構造解析を計画している.過去に使用した経験がある上記の2施設を選択した.また,透過電子顕微鏡による観察や組成分析等を行い,計画通りに実施することが困難なX線結晶構造解析から得られる情報を補てんできるようにする.H26年度は磁気測定等の物性測定は研究計画通りに進めることができる見通しであるので,結晶構造解析を行う前に物性測定を先に進め,物性評価による合成条件の最適化を図っていく計画である.また,低温磁場中での誘電特性の測定を可能とするための測定システムの構築を行い,作製した実験試料の誘電特性測定も行う計画である.
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次年度の研究費の使用計画 |
放射光施設でのX線結晶構造解析,磁気測定など実験を計画通りに進めることが不可能だったなどの理由から,実験の実施を目的とした出張回数が減少した. H26年度はH25年度に実施することが出来なかった実験を補うために,複数の放射光施設での実験,研究協力者の協力を得て磁気測定などの物性測定や電子顕微鏡観察などの実験の実施を増やす計画である.次年度使用額はそのための旅費と施設使用料金に充てる計画である.
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