研究実績の概要 |
マルチフェロイック物質ナノ粒子の電気磁気サイズ効果の解明という目的遂行のため,マルチフェロイック物質RMnO3 (R = Eu, Gd, Tb, Dy),DyMn2O5のナノ粒子の合成を行い,結晶構造と磁性の研究を進めた.研究期間初年度(H25)にこれまでに報告例のないRMnO3ナノ粒子の合成に成功し合成手法を確立した.サイズ効果の詳細を明らかにするため,H26,27年度では確立した合成手法を用いて粒子サイズ約7~30 nmのRMnO3とDyMn2O5ナノ粒子の合成に成功し,それらの結晶構造と磁性の調査を行い下記のことを明らかにした. 合成したナノ粒子の結晶構造解析を放射光施設SPring-8,フォトンファクトリー等で行い,各々の物質のナノ粒子の結晶構造がサイズ依存性を示すことを明らかにした.ナノ粒子の格子定数はRイオンの違いにより多少異なるが,約15 nm以下でバルク結晶の値から逸脱し,その差は粒子サイズの減少に伴い大きくなる.それらナノ粒子の磁性は一般的な磁気サイズ効果とは異なる特異な振る舞いを示し,ブロッキング温度や保磁場などの磁性パラメータのサイズ依存性は通常のサイズ依存性と逆の振る舞いをすることを明らかにした.また,Rイオンの違いによって異なる振る舞いを示し,それはRイオンの変化によるバルク結晶の磁性の変化に起因したものと考えている. 一方,マルチフェロイック物質のナノ粒子を内包した薄膜を基板上に作製することができれば高機能デバイス開発に発展させることができると考え,Si 基板上にRMnO3ナノ粒子内包薄膜を作製する手法の確立とそれらの物性と構造の研究を進めた.H27年度には,これまでに確立したメソ多孔体薄膜作製技術とH25年度に確立したナノ粒子合成手法を組み合わせ,Si基板上にDyMnO3ナノ粒子内包薄膜の作製に成功したことを示唆する結果を得た.
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