当初,初年度に実験動物に対するカルパイン阻害剤の投与を計画していたが,生体に対する安全性や作用機序等の情報に乏しいため,まずin vitroにおいて分子メカニズムの解明を行うこととした.カルパイン阻害剤MDL28170が,宿主細胞内におけるクラミジアの増殖抑制に極めて有効であることから,他の様々なカルパイン阻害剤を用いて同様にクラミジア増殖能を検討した.その結果,同じカルパイン阻害剤でも強い増殖抑制効果を持つものと効果を示さないものの2種類に分けられた.増殖抑制効果をもつカルパイン阻害剤に関してその構造を比較したところ,類似した疎水性ジペプチドから成る構造を有していることが明らかとなった.また,感染12時間後まで阻害剤の処理を遅らせても,増殖抑制効果は保持されることが明らかになった.また,カルシウムイオンのキレートによる内在性の不活化もクラミジアの増殖低下を引き起こすことを明らかにした.更に,クラミジア感染細胞において,カルパインがクラミジア封入体に局在することを明らかにした.これらの結果クラミジアがカルパインを自身の増殖に用いていることを強く示唆する 次に,MDL28170は,クラミジア感染マクロファージの免疫応答,特に炎症性サイトカイン産生を強く抑制した.この現象について検証したところ,MDL28170はNF-kB経路の転写因子RelAタンパク質の核内移行を強く抑制し,その結果サイトカイン発現が抑制されることが明らかとなった.現在これらの分子メカニズムの解明の結果をまとめ現在論文執筆中である
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