研究課題
若手研究(B)
本年度は①ブタ膵島がHMGB1を放出するか、②最適な移植部位の検討、③条件の良い膵島カプセル化方法の確立、の3点について実験を行った。①ブタ膵島がHMGB1を放出するかに関して、adult pigから膵島を分離した。分離膵島は収量・質ともに良好であった。分離膵島を培養し、培養液中に放出されたHMGB1を測定すると、培養前 (n=4)が 0.83±0.17ng/mLであるのに対して、3日間培養後(n=4)が22.33±4.48ng/mLで培養液中HMGB1値は有意(p<0.001)に上昇していた。我々は過去にマウスおよびヒト膵島からHMGB1が放出されることは報告したが (J Clin Invest. 2010;120(3):735-43., Cell Transplant. 2012;21:1371-1381., Cell Transplant. 2014;23:153-165.)、ブタ膵島もHMGB1を放出することが明らかになった。②移植部位の検討は、同種同系移植で移植効率の比較実験を行った。カプセル化していないマウス膵島をSTZ糖尿病マウスの肝臓、腎皮膜下、皮下、腹腔内に移植し、正常血糖になる必要個数を検討した。腎皮膜下(100~200個)、腹腔内(200~400個)、肝臓(200~400個)、皮下(400個以上)で正常血糖になった。カプセル化していない膵島移植は腎皮膜下が最適であったが、腎皮膜下の容量は限られており、カプセル化膵島移植の場合、移植するvolumeが増加するため、腎皮膜下よりも腹腔内が適していると考えられた。③条件の良い膵島カプセル化法の確立に関しては、アガロースによる膵島カプセル化を行った。アガロースでカプセル化したマウス膵島1000個の腹腔内移植で一例、正常血糖化した。しかし、400~1200個の膵島を計8例移植したが、正常血糖化したのは1例のみであった。正常血糖にならなかったマウスをautopsyし、腹腔内を検索したが、カプセルのみ存在し、カプセル内の膵島は消失していたため、アガロースによるカプセル化は最適ではないと考えられた。
3: やや遅れている
マウス膵島およびヒト膵島と同様にブタ膵島からHMGB1が放出されることが明らかになり、また同種同系移植で、カプセル化膵島の移植部位としては腹腔内が適していることが明らかになったことは順調に進行した。しかし、実験当初は、アガロース膜の方が諸々の薬剤を混入しやすく、移植早期炎症反応を制御できる薬剤を混ぜたアガロース膜で膵島をカプセル化しようと考え素材としてアガロースを選択したが、アガロースによる膵島のカプセル化は移植効率・成績が悪く、今後は素材をアルギン酸に変更し、アルギン酸膜によるカプセル化膵島を移植に用い、移植成績・効率、移植後の免疫反応の解析を施行する予定にしており、素材変更に伴いやや進展が遅れている。
実験当初は、アガロースの方が諸々の薬剤を混入しやすく、移植早期炎症反応を制御できる薬剤を混ぜたアガロース膜で膵島をカプセル化しようと試みたが、アガロースでの膵島カプセル化は移植効率が悪かった。今後は、カプセル化の素材をアガロースからアルギン酸をベースにした素材に変更する。また、ブタ膵島は分離できる膵島の質及び量がブタの個体差がかなりあり、一定したデータが取りにくい。今後は、ブタ膵島をマウスに移植するdiscordantの異種移植系には継続しつつ、ラット膵島をマウスに移植するconcordantの異種移植系でカプセル化膵島移植を実施し、移植成績・移植後の免疫反応等を解析する。
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