研究実績の概要 |
本年度は①条件の良い膵島カプセル化方法の確立、②カプセル化膵島移植後の炎症反応の解析について実験を行った。 ①に関しては、アルギン酸を免疫隔離膜として用いた。マイクロカプセル化したブタ膵島をSTZ糖尿病マウス (C57BL/6J) の腹腔内に移植し、正常血糖になる必要個数を検討した。カプセル化ブタ膵島を15,000IEQ、10,000IEQもしくは5,000IEQ腹腔内に移植すると全例で血糖は正常化した(un-published data)。しかし、免疫隔離膜で膵島を被覆しているにも拘らず、移植3~4週間後にレシピエントマウスは再度高血糖となった。これは移植されたカプセル化膵島が異種免疫による拒絶反応、炎症反応による膵島障害、もしくはカプセル内での低酸素・低栄養に伴う膵島障害により高血糖になったのではないかと考え、まず移植カプセル化膵島を組織学的に解析した。組織学的検索では、カプセル周囲に少量のリンパ球を認めるもののカプセル内部に浸潤はしておらず、異種免疫反応が移植膵島喪失の主な原因とは考えにくかった。 ②に関しては、マウス腹腔内にカプセル化ブタ膵島を移植し、経時的に腹腔内に浸潤した単核球を回収、フローサイトメトリーで細胞種類および細胞内サイトカインの解析を行った。移植後腹腔内に浸潤する細胞の総数は移植後3~7日をピークに上昇し、移植後28日に移植前と同レベルまで減少した。浸潤細胞は主にマクロファージ、好中球、樹状細胞であった。浸潤細胞はTNF-α、IFN-γ、IL-6を発現していた(un-published data)。以上より、カプセル化ブタ膵島をマウス腹腔内に移植すると、移植後一週間をピークにマクロファージ、好中球、樹状細胞が集積し、TNF-α、IFN-γ、IL-6を産生していることが明らかとなった。
|