本申請研究は申請者が取り組んできたスプライン関数の理論と応用に関する研究の発展研究として位置づけされるものである。特に、スプラインベースドアプローチにより、手書き文字の静的画像から文字筆順を復元し、その復元筆順情報から書字者の書字速度・加速度パターンなどのいわゆる動的書字スキルを抽出するための手法を確立する、ことを目的とする。これらの成果は法科学分野の筆跡鑑定やパーキンソン病に対するリハビリテーション効果判定法をはじめとする多様な分野へ新たな指針を与えるものになると期待できる。
最終年度の平成27年度は、主に平成26年度の研究の発展として「骨格スプラインモデルの理論とアルゴリズムの開発」、それに加えて「動的書字スキル抽出法の開発」に取り組んだ。前者の課題については、ヒトの書字運動時に「筆滑り」が生じることからヒントを得て、そのような筆滑りにロバストな文字の骨格モデルを得るものであった。これらは数値実験等では良好な結果が得られていたものの、実データを用いた実験では数値実験とは異なり良好な結果が得られないことが判明した。実データを分析したところ、筆滑りはペンの位置のずれが100msほどのバーストとして起こり、さらに、その速度、加速度ともに瞬間的に大きくなることを突き止めた。そこでL1多階層平滑化理論を構築し、実際の筆滑りであっても良好な結果が得られることを確認した。一方、後者の課題については、書字運動モデルを最適化問題として定式化まではできているものの、書字運動時間に関する推定法については良好な結果が得られたとはいい難く引き続き検討が必要である。
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