本研究の目的は、小学校への就学という移行を社会文化的な視点からとらえなおし、その意味を再考することであった。本研究では、ヴィゴツキーの児童学で行った研究知見を手がかりとしながら、就学移行プログラムを構築した。 その結果、以下の2つの視座を得ることができた。第一に、年齢発達と環境の変化にともない個人の「情動体験」が変容することである。このことは、「発達の社会的状況」の変化により、個人の経験の有り様が変化することを示唆している。第二に、就学移行期は「発達の危機」として子どもの態度や行動に表れ、一見するところの否定的であるが、それは次への発達の契機を孕んだものであった。
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