研究課題/領域番号 |
25871012
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研究機関 | 別府大学 |
研究代表者 |
竹安 大 別府大学, 文学部, 講師 (80585430)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 長音 / 知覚 / 特殊拍 / ピッチ |
研究実績の概要 |
平成25年度の実験結果を踏まえて、平成26年度には日本語母語話者の長音の知覚においてピッチ変動の影響が種々の条件(語内の位置、被験者の属性、ピッチ変動の向き等)とどのような交互作用を持っているのかをさらに調べるための知覚実験を実施した。また、長音・促音・撥音を含めた特殊拍全体の知覚とピッチ変動の関係の一般化に向けた実験実施にも着手した。さらに、特殊拍間の相互作用を調べるため、超重音節に関する考察も行った。 今年度は、主に長音の知覚に関して、昨年度に実施した撥音に関する実験結果との比較や、過去に実施してきた東京方言や東海地方の方言での実験結果と九州地方の方言での実験結果との比較を行い、以下のことを明らかにした。実験の結果から、日本語母語話者の長音の知覚におけるピッチ変動の影響の現れ方は、語内の位置のみならず被験者の方言によっても異なる可能性が示され、従来言われてきた下降調が長音知覚を促進するという単純な一般化の妥当性に疑問を投げかける結果が得られた。さらに、同じ特殊拍に分類される長音と撥音とで、ピッチ変動の現れ方が異なることが示唆される結果も得られた。以上の実験結果は、特殊拍の知覚とピッチ変動の関係の一般化をすることは現時点では困難であるものの、この分野の研究に一般言語学や社会言語学的観点からの研究の余地があることを示すものであった。翌年度は、こうした観点を取り入れながら、より条件をコントロールした知覚実験により、特殊拍の知覚とピッチ変動の関係の一般化を目指す必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、昨年度よりも知覚実験の被験者をスムーズに集めることができ、結果的により多くの知覚実験を並行して進めることができ、この点では当初の計画以上の進展があった。一方、集めたデータが多くなった分、集計・入力に時間を要してしまい、研究代表者の所属機関異動も重なって、実験結果を分析・考察するのがやや遅れ気味になり、研究成果を論文として報告するのは来年度に持越しとなった。以上のことを総合的に判断して、研究はおおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度に実施した研究結果から、日本語母語話者の特殊拍の知覚におけるピッチ変動の影響の現れ方には様々な要因が関与しており、比較的影響の度合いが強く一貫していると考えられてきたピッチ下降の影響でさえも、単純な一般化をするには時期尚早であることが明らかとなった。一般化するためには多様な条件による実験結果が必要であるが、先行研究と自身の研究を含め、現状ではデータが足りない状況であるため、今後さらに条件を変えて実験を実施し、自身の研究における一般化およびこの分野を研究する他の研究者に資するデータの提供を行う。 また、本研究課題は最終的に日本語学習者が日本語におけるピッチ変動の影響を習得していくのかを明らかにすることを目標とするものであるが、その前提となる日本語母語話者に観察されるピッチ変動の影響自体が、当初想定されていたものよりも相当複雑であることが明らかとなったため、目標を達成するためにも当面は日本語母語話者に見られるピッチ変動の影響の解明に注力する。
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次年度使用額が生じた理由 |
端数の104円が残額として残り、次年度使用予定となった。
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次年度使用額の使用計画 |
来年度に使用する予算と合わせて、実験謝金もしくは消耗品の一部に充当する予定である。
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備考 |
今年度の研究成果の一部は、Haruo Kubozono (ed.) Phonetics and Phonology of Geminate Consonants(仮題)の第8章に掲載予定(現在、査読・修正中)。
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