研究課題/領域番号 |
25871013
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 志學館大学 |
研究代表者 |
岡本 宏美 (溝上 宏美) 志學館大学, 人間関係学部, 講師 (10464215)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 現代史 / イギリス / 脱植民地化 / ボランティア団体 / 女性団体 / 国際支援活動 / 英領マラヤ |
研究概要 |
平成25年度においては、当初計画通り、予備調査としてイギリスの非政府組織の植民地での活動に関する先行研究の調査を行うとともに、1950年代のNFWIの植民地での活動、とりわけ、英領マラヤにおける婦人会の組織活動に関する史料をイギリスで収集し、分析した。 研究成果については、まず、平成25年6月21日に韓国、新羅大学校で開催された第5回韓日イギリス史学会(The 5th Japanese-Korean Conference of British History)にて、'Women at Home with the Declining Empire-Women's Institutes and 'Others' after the Second World War'のタイトルで同時点における研究の状況について報告を行った。その際にコメンテーターやフロアから頂いた助言を踏まえ、また9月に行ったイギリスで収集した史料を分析、整理して、NFWIの1950年代の活動の状況を明らかにし、論文('Colonial Welfare and Women's Voluntary Groups in the Decolonization Era: A Perspective from the Women's Institute during the 1950s', The East Asian Journal of British History, Vol.4に掲載予定)にまとめた。同論文では、第二次世界大戦直後から1950年代末までのNFWIの海外支援活動の状況を、とりわけ、同組織の国際小委員会の活動記録をもとに明らかにした。その結果、第二次世界大戦後、植民地での独立機運が高まり、国際的にも植民地支配に対する批判的視線が強まるなか、NFWIも植民地に対する姿勢を将来の独立を備えたものに変えていったこと、特に、1950年代初頭にマラヤ高等弁務官の妻の依頼を受けて行われた英領マラヤでの婦人会組織活動が、NFWIの国際支援活動の強化と、その性格の再定義に結びついていたことを指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していたように、NFWIの1950年代の植民地を対象とした国際支援活動の実態に関しては、NFWI側の史料からかなり明らかにすることができ、論文にもまとめることができた。ただし、論文では、史料収集の段階で同組織が参画していた植民地省の委員会の名前がわからなかったため、政府側史料の収集はうまくいかず、分析対象とすることができなかった。NFWI側の史料分析の結果、正確な委員会名がわかったため、平成26年度に政府側史料を収集し、他のボランティア組織との関係も含め、分析を進めたい。 なお、非政府組織に関する先行研究調査については、当初想定していたより若干遅れているため、学内業務や教育とのバランスを取りながら、意識的に進めるように努力する。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの達成度で述べたように、平成25年度の分析を通じて、NFWIと植民地省との関係を明らかにするうえで不可欠となる史料の存在が明らかになった。平成26年度においては、再度イギリスでこれらの史料を収集し、NFWIと政府、そして委員会に参加していた他のボランティア団体との関係について検討をしていく。当初、平成26年度はもう一つの女性団体、WVSについても調査する予定であったが、平成26年度は植民地省側の史料収集、分析を優先し、WVSの調査については政府関係史料の収集とのバランスを考えて、調査を行うかどうかを決める。 また、関連文献の調査、整理も前年度の反省に立って、進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じた最大の理由は、旅費が想定よりかなり低くなったことがある。その主な理由は以下の2点である。1点目は、今回、主にロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの付属図書館内に移動したウィメンズ・ライブラリー中心での史料収集になり、運よく、同大学の寮に宿泊できることになったことから宿泊費が低く抑えられたことである。2点目は、当初、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス以外にナショナルアーカイブやオックスフォードのボードリアン図書館にもいく予定であったが、史料所蔵状況、調査の状況からこれらの場所へそれほど移動する必要がなくなり(オックスフォードにはいく必要がなくなった)、イギリス国内での移動費がなくなったことがある。加えて、業務の関係で、滞在期間もやや短縮せざるをえなかった。 9月に一度史料調査に行く予定であるが、前年度の経験、および現時点で予測される業務の状況から、9月の調査はナショナルアーカイブ中心、短期間での調査になり、当初計画していたWVSの文書館にはいけない可能性が高い。また、ナショナルアーカイブで収集した植民地省の委員会史料を一度分析したあとで、その後の史料収集の方針を一度考え直す必要がある。研究計画をすすめるためにも、2月か3月にもう一度調査を行う必要が出る可能性が高い。次年度使用額は、その際の調査費用の一部として使用を計画している。
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