本研究課題は高等植物シロイヌナズナにおけるヒストンH3K9脱メチル化の分子機構を明らかにすることを目的としている。特に我々が同定したH3K9脱メチル化酵素IBM1がどのように標的配列を認識するのかという問題に取り組んでいる。これまでに単離された我々がibm4と呼ぶ変異体はibm1変異体と同様にゲノム中の特に遺伝子領域のnon-CG配列、特にCHG配列に高DNAメチル化を引き起こすことから、IBM1と同様の経路で機能する遺伝子の機能喪失変異体と予想された。連鎖解析の結果、ibm4の原因遺伝子はIBM1遺伝子座近傍にマップされたが、IBM1遺伝子そのものに変異は発見されなかった。そのためDNAメチル化の変化による発現への影響を調べるためBS-seqを行ったところ、ibm4のゲノムワイドなDNAメチル化パターンはibm1のそれと非常によく似通っていた。更なる解析の結果、IBM1の第7イントロンに存在するDNAメチル化がibm4では消失していることが明らかになった。先行する研究からこのイントロン内のDNAメチル化はIBM1mRNAの適切なスプライシングに関与していることが知られている。とくにDNAメチル化低下を引き起こす変異体でIBM1発現異常を引き起こすことがわかっている。現在このDNAメチル化の消失とIBM1の発現の変化を形質転換植物を用いて解析している。また、並行して行ったIBM1と相互作用する因子の生化学的な探索から複数の候補因子を見いだしている。
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