研究実績の概要 |
運動トレーニングが腸内細菌に与える影響を検討するため地域在住中高齢者13名を対象に6ヶ月間期間の介入を行った。また、横断研究として健常成人6名からは糞便サンプルより総菌数に対するBacteroides、Lactobacillus, Bifidobacteriumの割合を評価し、運動能力(脚筋力、有酸素能力)との関連を検討した。6ヶ月間の運動トレーニングは前半3ケ月間は月1回のコミュニティセンターでの運動教室と家庭での自重体重を用いた運動プログラムを用い、後半3ケ月間は大豆発酵飲料摂取と家庭での運動プログラムを併用した。測定項目は形態と等速性脚筋力、ストレスホルモンとして尿中コルチゾール、呼気水素濃度を測定した。形態は生体電気インピーダンス法を用いて骨格筋量や体脂肪率を評価した。介入3ヶ月間のトレーニングにより脚筋力や骨格筋量に有意差はないものの運動介入で各項目は増加を示し、介入6か月後も介入前に比較し高値を示していた。介入3ヶ月間のトレーニングにより脚筋力に有意差はないものの運動介入で最大筋力値は増加し、介入6か月後も介入前に比較し高値を示していた。体脂肪量及び体脂肪率は時に比較し、飲料摂取と家庭での運動プログラムを併用後(6か月後)に有意な低下を示した。クレアチニン値補正した尿中コルチゾール値に変化は認められなかった。介入前、介入3カ月後、介入6か月後に測定した食後呼気水素濃度上昇は、介入前に比較し飲料摂取と家庭での運動プログラムを併用後(6か月後)に増加を示した。横断的に検討した糞便サンプルからの腸内細菌と運動能力との間に関連性は認められなかった。 本研究全体を通して、運動に伴う腸内細菌変容の検討には個人内変動の追跡が有用と思わる。また糞便サンプルからの単一菌解析のみでなく菌叢の遺伝子発現やタンパク質発現を評価するマルチオミクスを用いて更に検討を加える必要性が伺われた。
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