研究課題/領域番号 |
25871018
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研究機関 | 東北文教大学短期大学部 |
研究代表者 |
永盛 善博 東北文教大学短期大学部, その他部局等, 講師 (20507967)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 空気 / 風 / 理科 / 生活科 / 科学読み物 |
研究実績の概要 |
今年度の研究は、これまでの研究の流れを受けた第3研究に位置付けられる。第1研究では空気や風に関する認知発達研究の成果を、第2研究では学習指導要領での空気や風の取り扱いの変遷を取り上げた。そしてこれまでの流れを受け、この第3研究では、空気や風を取り扱った理科・生活科教科書、科学読み物を取り上げた。より具体的には、空気が持つ様々な性質のうち、もっとも基本となる「空気が周囲に存在する」ことに関する記述が、これらの書籍において、何学年にどのような取り扱われているかを検討し、その取り扱い方の問題点を探った。 検討した結果、まず理科の教科書では、空気の存在そのものが取り上げられていることはほぼなく、唯一取り上げられている場合も「身の回りには空気があるんだ」と一言記されているのみで、主題的に取り上げられていることはなかった。つづいて生活科教科書においても理科教科書とほぼ同様の結果であった。生活科教科書においては、出てくる記述は「つくってあそぼう」「かぜで あそぼう」といったように遊びに限定されており、概念的な記述はなされていなかった。最後に科学読み物においては、「みんなのまわりに」「どこにでも」「いっぱい」空気が存在するといった記述がなされていることを確認した。くわえて、これらの記述について認知発達研究の結果との照合を行い、これらの記述だけでは、子どもが持つ「蓋のついたものの中には空気はない」「蓋や封をはずすと空気が煙のように出ていく」といった科学的には誤った考えの発生原因はわからないこと、そしてこういった考えが子どもの認知の特徴の即することを意識した書籍や実践からも生じうる可能性を指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
まず進捗状況が「遅れている」と判断した理由として、当初予定においては、空気や風に関する認知発達研究や学習研究をまとめた上で、それらの研究の問題点を改めて指摘し、その問題点を解消する研究を、幼児・児童を対象としたインタビューにて進める予定であった。しかし、現状としては、ようやく先行研究が終わったところであり、ようやく調査に取りかかれる状態である。 このように研究が遅れた理由としては、研究期間の延長申請で行ったとおり、家庭の状況が第一に挙げられる。今回の研究期間において長子・次子が誕生し、今年度は育児休業を取得する必要が出るほどの状態であった。そのため、計画していたエフォートを研究に確保することができない状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
進捗状況に記したとおり、現状を踏まえると、計画どおりに研究を進めることは困難である。そのため、可能であればインタビュー調査を行いたいが、次善策として、小学生を対象としたアンケート調査を行うことを考えている。 インタビュー調査であれば、回答者の回答に不明確な点があった場合に追求できるという利点がある。その一方で、個別に行い必要があり、調査に時間を要するため、申請者の現状においては利用しづらい調査方法といえる。 これに対して、アンケート調査であれば、インタビューのように追求できないし、幼児には調査できないというデメリットはあるものの、短時間で調査を終えることができる。そこで、追求を行わなくても回答者が明確に答えられるように、アンケート項目の精査を行うことで、このデメリットを解消したいと考える。 なお、今回の研究テーマにおいては、「物理現象を因果的に説明することで物理的知識が構築され、その構築される知識は、説明者の持っている因果性に制約される」という仮説を検証することが目的となる。そして、先行研究より、この知識構築が顕著に生じると考えられるのは、小学校2~3年生ごろと予想している。この点を考慮すれば、幼児に対するアンケート調査は必ずしも行わなくてもよい可能性があるため、アンケート調査を遂行する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
インタビュー調査での謝金,もしくはアンケート調査の郵送費として費用を計上していたものの,いずれも時間的都合により実施できなかったため,次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
時間的制約により,当初研究計画で記していたインタビュー調査からアンケート調査に変更し,近隣の小学校を中心に依頼を行い,アンケート調査を実施する計画である。その際のアンケート用紙の郵送費,ならびに小学校からの返送費に,助成金を使用する。
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