研究課題/領域番号 |
25871019
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 会津大学短期大学部 |
研究代表者 |
神野 未希 会津大学短期大学部, その他部局等, 助手 (20633514)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 大豆 / 浸漬 / 煮熟 / 放射性セシウム / 調理 / 福島県産食材 |
研究概要 |
市場に出ている福島県産の食材は、いずれも放射性セシウム濃度が基準値以下であるのだが、現状では未だに不安を持つ消費者がいる。このため福島県産の食材に対する安心をさらに高めることを目的として、放射性セシウム濃度が基準値以下(100~90Bq/kg)の福島県産大豆について、家庭で一般的に行われる浸漬と煮熟によりセシウム濃度をさらに低減させる方法を比較検討した。 浸漬液の種類は水、食塩水、重曹水、酢水、日本酒水、湯、重曹湯の7種類とした。また、大豆を煮熟するための鍋は、一般的なステンレス鍋と圧力鍋を用いてそれぞれ単独および組み合わせて比較した。 放射性セシウム濃度の測定は、原材料の大豆、洗浄後の大豆、浸漬後の大豆、煮熟後の大豆について行い、それぞれの工程における放射性セシウムの除去率および残存割合について調べた。その結果、原材料大豆を水で洗浄することにより、放射性セシウムは8.0±5.42%除去され、このことから、水の洗浄によっても多少の除去が行われることが示された。浸漬での放射性セシウムの除去率は、重曹湯によるものが最も高く62.6±0.91%であった。その次に、湯による浸漬の除去率が高く50.3±4.38%であった。その他の浸漬液は、それぞれの間に有意な差は認められなかった。また、煮熟用の鍋の違いは放射性セシウムの低減にあまり影響しない結果であった。 結論として、洗浄した大豆を魔法瓶に入れ重曹湯による保温浸漬を行い、その後鍋による煮熟を行うことにより、家庭における調理においても放射性セシウム濃度を約1/5にすることが可能であることが分かった。浸漬の魔法瓶活用は、災害時だけではなく、日常におけるエネルギー節約の観点からも有効な手段である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
現在の本研究結果である、大豆の家庭調理による放射性セシウム量の低減について、日本災害食学会に論文を投稿し、現在製本中である。 また、この結果を用いた非常食の調理を現在検討している。7月に行われる日本災害食学会に登録済みである。
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今後の研究の推進方策 |
大豆の放射性セシウム除去について報告したが、これらの結果を用い、家庭調理における大豆活用のローリングストックを検討中である。非常時の食事は炭水化物が主体となる傾向がある。これを避けるため単品料理として炭水化物、たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラル等が充分に摂取できるキッシュを提案した。キッシュは全て福島県産食材を用いている。タルト生地にすり潰した大豆を用い、米粉と併用することでアミノ酸バランスを整え、さらに、アパレイユに使用する牛乳や鶏卵と共に良質なたんぱく質量を増やし、具材で他の栄養素を補うようにした。大豆は生活習慣病や骨粗鬆症を予防する機能性成分が多く含まれているため、定期的な摂取には意義があり、また、ローリングストックへの活用は大豆の利用拡大にもつながる。キッシュは摂取の簡便さにおいても優れている。既製品も流通しているが家庭での調理は、食べ慣れた食材の活用、味の選択、エネルギーのコントロール、アレルギーへの対応などが可能となる。現在は、キッシュの冷凍貯蔵による一ヶ月間サイクルのローリングストックにおいて、品質変化を化学的および生物学的検査により調べている。 包装方法としては3種類を比較検討し、最適な保存方法を見極める。また、大豆からの放射性セシウムの除去は、カリウムなどのミネラル類も同時に溶出する可能性もあり、このことも考慮して使用する食材をさらに検討し、自然解凍でも美味しいキッシュを追究すると同時に、福島県産食材の安心さをアピールし、福島県の復興に力を入れる。
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次年度の研究費の使用計画 |
26年度に災害食の調理について研究を行うため、高性能な真空包装機(約50万円)が必要であり、予算をこれに当てることとしたため。 26年度の4月に真空包装機を購入した。これを使用し、福島県産の食材のみで災害食を調理作成し、その保存方法について他の包装方法と比較検討する。
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