2015年度は本科研の最終年度であり、フィールド調査の実施及び結果分析を行うとともに、科研全体のまとめを行った。8月には新潟県越後妻有地区においては、3年に1度開催されると「大地の里芸術祭 トリエンナーレ」を訪問し、主として芸術活動を通した「教育エージェント」の活動について分析を行った。また、同8月には北海道函館市でのフィールド調査を行い、大学と市との協働における「学び」の実践形態とその意義とのを分析を行った。11月には山梨学院大学付属小学校での調査を実施することを通して、生活空間に埋め込まれた教育的意図を活かした「教育エージェント」モデルの構築を精緻化した。 本年度までの調査分析結果を踏まえ、2015年度は日本保育学会での発表及び、新渡戸文化短期大学学術雑誌での論文発表を行った。その結果として、以下の3点を明らかにした。第一に、「学校知」と「生活知(実践知)」との分離の問題を解決するためには、概念上の再構築を踏まえた上で、それを具体化する「教育エージェント」同士の協働による教育実践が不可欠である。第二に、当該の「教育エージェント」の協働は、家庭-学校-地域のフィールドの移動にとどまるものではなく、子どもたちが思考や行動を行う領域としての「生活空間」そのものの組み直しとして意義を持つ。第三に、家庭-学校-地域における「教育エージェント」の協働が生み出し得る「生活空間」においては、子どもたちが獲得する「知」として創造性や発展性が包含されることを想定できる。 上記の点から、学校-家庭-地域の連環は単なる個別のフィールドの付け足しではなく、ひとつの「生活空間」として機能することが求められることを提示した。
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