研究課題/領域番号 |
25871024
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 大阪人間科学大学 |
研究代表者 |
山崎 康一郎 大阪人間科学大学, 人間科学部, 講師 (30635868)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 性暴力加害行為 / 触法障害者支援 |
研究概要 |
研究協力機関である地域生活支援研究会(以下、支援研究会と表記する)を2013年度に4回開催した。支援研究会において性暴力加害行為に関する認識や研究の目的の検討及び認識の共有を行うとともに、各メンバーの臨床経験から支援の現状や課題について議論し、アンケート調査の目的や調査対象について検討を行った。また、愛媛県職員(心理職)、愛媛県警職員等で構成される性暴力加害行為のある少年へのアプローチに関する研修会(「性問題行動へのアプローチ研修会」)に講師として6回参加し、性暴力加害行為とその支援について情報収集を行った(次年度も継続予定)。さらに、海外の先進的な取り組みについての情報を得るために、イギリスで行われている知的障害のある性暴力加害者へのアプローチ(SOTSEC-ID)に関する研修会に参加し、心理教育プログラムについてレクチャーを受けるとともに、その後の研究会にも参加した(次年度も継続予定)。 以上の事柄を基に、水藤准教授(山口県立大学)、我藤研究員(龍谷大学矯正保護総合センター)の協力を得て、調査内容を精査し、アンケート調査の準備を行った。尚、研究の倫理的な配慮のため、所属機関の倫理審査を受け承認を得た。2013年11月から12月に、支援研究会のメンバーの紹介による地域生活定着支援センター職員等へのトライアル調査を行い、アンケート調査表を作成した。 研究は多機関連携による支援体制の構築と心理教育の導入という2つのアプローチから今後の支援体制を模索するものであり、アンケート調査は、両アプローチの内容を含むものとした。大阪知的障害者福祉協会の協力を得て、調査表を2014年2月に大阪知的障害者福祉協会加盟事業所に所属する支援者へ配布した。調査期間は1ヶ月間で、郵送により回収した。回収後、データ入力作業を行った。現在、研究協力者と共に分析作業を進めているところである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的として、我が国において先行研究の少ない性暴力加害行為のある知的障害者への支援について、今後の支援体制を構築する上で有用な知見を得ることをあげた。支援の現状や有効な支援方法に関する知見が少ないため、探索的研究によって、現状把握や支援実践の前提となる「支援者は性暴力加害行為をどのように捉えているのか」という枠組みをまず明らかにするよう研究をデザインした。また、多機関連携による支援体制の構築と心理教育の導入という2つの側面に焦点を当てたものとした。 2013年度は大阪知的障害者福祉協会の協力を得てアンケート調査を実施した。郵送により調査表を支援者へ配布し、支援の現状に関する支援者の認識と共に、性暴力加害行為を捉える枠組みや支援に対する支援者の意識を併せて調査した。調査結果について現在分析を進めている。その中で、性加害行為のあった知的障害者への支援内容や他機関との連携に関する支援者の認識、今後の支援についての支援者の認識が明らかになった。また、福祉領域において性暴力加害行為のあった知的障害者の実態や支援の現状、加害行為の動機やプロセスを明らかにするにあたっての課題が示された。
|
今後の研究の推進方策 |
研究計画においては、支援体制構築アプローチと心理教育アプローチによる複合的な支援モデルを構築するための調査を行うこととなっている。2013年度に両アプローチの内容を含むアンケート調査を実施した。現在は調査結果の分析を進めているところであり、2014年度は、その結果を基に、インタビュー調査の実施を計画している。ただし、アンケート調査と同時にインタビュー調査の協力依頼を行ったが承諾が得られた支援者は0人であった。そこで、インタビュー調査の対象者を、研究協力者からの紹介者で性加害行為のある知的障害者を支援した経験のある支援者とし、現在協力依頼を行っている。 インタビュー調査は、当初計画では心理教育アプローチに焦点を当てて加害行為の動機やプロセスを明らかにすることを目的としていたが、アンケート調査からは支援者自身の認識をより詳細に明らかにすることが必要であると考えられた。そこで、研究協力者である水藤准教授および我藤研究員と次の方針について確認し、準備を進めている。インタビュー調査は支援体制構築アプローチと心理教育アプローチの2つの側面から性暴力加害行為のある知的障害者への支援の現状や加害行為に対する支援者の認識に焦点を当てたものとする。その際、調査項目はアンケート調査結果、SOTSEC-IDモデル(研究代表者や研究協力者が研究会に継続参加している)、研究協力者の臨床経験の分析を基に作成していく。
|
次年度の研究費の使用計画 |
費用が生じた理由は、2年間における研究の計画であり、次年度は主に以下の項目で費用が必要となる。①2013年度は障害福祉サービス事業所の支援者を対象としたアンケート調査を実施した。2014年度はこの調査を基に、支援者についてインタビュー調査を予定している。そのため、インタビュー調査の準備や分析の費用として必要である。また、アンケート調査の分析や調査成果の公表を行うための費用として必要である。②国内、海外での性暴力加害行為者へのアプローチについて情報を得るための費用として必要である。 以下のような使用目的のために支出を計画している。 ①アンケート調査の分析やインタビュー調査の検討のために研究協力者との会合を行うが、研究代表者や研究協力者の旅費として使用する。②アンケート調査の成果の公表として、学会発表、調査協力者への冊子の配布や研修会の開催を予定している。冊子の作成費用、及び学会参加や研修会のための旅費に使用する。③性暴力加害行為へのアプローチに関する情報収集のために「性問題行動へのアプローチ研修会」(愛媛県)へ参加する旅費、海外の取り組みに関する研究会への参加する旅費として使用する。④インタビュー調査の作成のための事務用品費、調査旅費、分析のための謝金として使用する。
|