本研究は,テレビ等の映像視聴者に対して特定の情報を伝達するために効果的な情報呈示方法を考察することをねらいとした. 本年度は,L字型画面(主映像を縮小することでできる空き領域に速報等の情報を表示するテレビ放送の形式)を取り上げ,映像へ視線を留める頻度や時間にL字型画面がどのような影響を及ぼすか実験的に検討した.また,鑑賞者が映像内容をどの程度理解できたと感じ(理解感),実際にどの程度思い出して記述できたか(再生度)等,理解に関わる主観的な評価についてもL字型画面の影響が見られるか併せて検討し分析を重ねた.分析の結果,L字型画面は映像に対する観察者の一停留時間の分布を変え,通常の画面で映像を観察するよりも長い停留時間の注視頻度が減少することで映像観察の総停留時間が短縮することが示された.すなわち,鑑賞者の映像の見方がL字型画面によって変容している可能性が示された.一方,映像理解感など主観評価に条件間の差異は見られず,これらの評価にはL字型画面の影響を確認できなかった.本研究の成果から,映像に重ね合わせることなく情報呈示が可能なL字型画面であっても,少なくとも鑑賞者の映像の見方そのものを変容させる恐れが指摘され,映像鑑賞者の視点に立った情報表示画面の重要性が論じられた. これらの研究成果の一部は国内外の学会で発表されるとともに,全ての成果は取りまとめられ,論文「L字型画面が映像鑑賞に及ぼす影響-視聴者に配慮したテレビ双方表示画面デザインへ向けた検討-」として日本感性工学会論文誌に掲載された.
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