研究課題/領域番号 |
25871028
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 仙台高等専門学校 |
研究代表者 |
権代 由範 仙台高等専門学校, 建築デザイン学科, 助教 (00553520)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | コンクリート / 圧縮 / 応力 / 耐久性 |
研究概要 |
本研究は、構造体コンクリートが曝される種々の荷重条件下で発生する応力が、各種耐久性に及ぼす影響を明らかにし、構造体に作用する応力の影響を考慮した耐久性照査・劣化予測手法の確立に寄与することを目的としている。本研究課題では、特にコンクリートに常時作用する圧縮応力を実験室において再現する簡易システムを構築するとともに、そのシステムを適用することで異なる荷重レベルでの耐久性試験を実施する。これにより部材に作用する荷重レベルの違いが各種劣化の進行速度に及ぼす影響を定量的に評価し、応力作用下における劣化進行メカニズムを解明しようとするものである。 今年度は、まず、コンクリート供試体に常時圧縮応力を作用させる簡易システム(応力導入載荷フレーム)を作製した。応力作用状態における各種耐久性試験の再現性を高めるため、供試体に一様な応力を伝播させることに主眼を置き、載荷軸の偏心や導入応力の減衰が極力生じない構造を検討した。その検討より、一辺40mmの正方形断面をもつステンレスバーで供試体を挟みこみφ25mmの主軸2本で応力を導入したまま拘束する形式とした。なお、材質をステンレスとしたのは、促進試験で用いる塩化物の影響を考慮してのことである。 次に、上記で作製した載荷フレームを用い、応力を導入したコンクリート供試体を対象とし、真空脱泡法により低粘度蛍光エポキシ樹脂を含浸・硬化させることで、供試体内部におけるマイクロクラックを可視化し、顕微鏡像によりクラックの性状や発生分布を把握した。これにより、導入応力の増加に伴い、クラック幅やクラックの発生密度が増加することが明らかとなった。また、各種耐久性試験の精度に影響を及ぼすと思われるコンクリートのクリープや載荷フレームのリラクセーションを把握するため、一部の応力導入状態の試験体を用いて供試体および載荷フレームの継時的な歪挙動の長期計測を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した研究実施計画に従い、各種システムの検討や実験を進めてきた。特に、今年度は、常時応力作用状態におけるコンクリートの各種耐久性試験を実施するための環境整備期間(応力導入載荷フレームの作製やコンクリートのクリープおよびフレームのリラクセーションの計測等)と位置付けており、今後の研究の進捗に大きく影響を及ぼすことから研究の遅延は許されないとの観点で、随時、研究計画を見直しながら研究に遅延のでる事態を避けつつ研究を進めることが出来た。しかし、前述したように今年度は環境整備期間という位置付けであったため、次年度以降に必須となる基本的なデータの取得にとどまった。そのため、当初予定していた研究成果の学協会における発表や学術論文の投稿は見合わせた。それ以外に関しては、「概ね順調に進展している」と言える。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、常時応力作用状態におけるコンクリートの各種耐久性試験を実施するための環境整備の期間と位置付けていた。概ね当初の計画通りに実験環境が整ったため、各種耐久性の評価・分析へと移行する。次年度はマクロ的な耐久性評価として、各種劣化促進試験を実施する。当初研究計画では、促進中性化試験、塩化物浸透試験、透過性試験、超音波伝搬速度試験および耐凍害性試験を予定しており、実験パラメーターとしては、コンクリートの水セメント比、空気量、養生条件および応力強度比を予定しているが、さらに、繊維補強コンクリート等の新たなパラメーターの追加も検討している。特に、次年度は相当数の実験を行う予定のため、試験体作製においては研究協力者が所属する機関での研究協力を依頼する可能性があり、実験の実施においても関連研究機関の設備の借用や実験補助者への謝金を検討する必要が生ずる可能性があるため、経費の割振り等について、実験の進行過程において随時調整していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の研究計画では、コンクリート供試体に常時圧縮応力を作用させる簡易システム(応力導入載荷フレーム)の作製にあたり、数回の試作を重ねて、その都度問題点を抽出するとともに改善を図り、最終的に提案するシステムとして完成に漕ぎ着ける予定であったが、比較的早い段階で要求性能を満たすことができた。そのため、当初計画で計上していた試作にかかる経費が未使用のままとなった。また、応力導入載荷フレームの汎用性向上のためフレーム自体の変形や耐力を構造解析により数値化する予定であった。しかし、構造計算の結果は、実際に耐久性試験(コンクリート)に使用する供試体の強度や性状に依存するため、次年度作製予定の供試体が完成した後に構造計算を実施した方がよいとの結論に至り、第三者機関における構造解析の依頼を先送りしたことも影響している。 当該年度で未使用となった経費については、当初計画に乗っ取って、各種耐久性試験に使用する供試体が完成した後に応力導入載荷フレームの構造解析に使用する。また、次年度は多くの耐久性試験の実施を予定しており、その実施の効率化を図るためには、実験に用いる応力導入載荷フレームの数を増やすことが望ましい。当初試作に使用する予定であった経費分については、応力導入載荷フレームを追加作製するためにかかる経費(材料費および加工費)として使用する。
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