研究課題/領域番号 |
25871028
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研究機関 | 仙台高等専門学校 |
研究代表者 |
権代 由範 仙台高等専門学校, 建築デザイン学科, 准教授 (00553520)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | コンクリート / 圧縮応力 / 常時荷重 / 応力強度比 / 耐久性 / 耐凍害性 / スケーリング / 物質透過性 |
研究実績の概要 |
本研究は、構造体コンクリートに生じる種々の応力が各種耐久性に及ぼす影響を明らかにすることを目的としている。平成27年度は、主に昨年度実施した各種耐久性実験の再現実験をもとに検討を進めてきた。その結果、何れの促進劣化試験および物性試験においても、無載荷状態と載荷状態のコンクリートでは、劣化進行速度に大きな違いが生じることを確認した一方で、一部の実験において昨年度実施した実験の結果を再現できない結果が得られた。 今年度は、多くの時間を再現実験における不整合に関する検証に費やしたが、得られた研究成果を纏めると次の通りである。まず、応力作用下におけるコンクリートの透過性について、透気性は応力強度比(導入応力/圧縮応力)30~40%において減少し,以降,応力強度比の上昇に伴い増加する傾向を示し、透水性は応力強度比10~20%で僅かに減少し,応力強度比30%以降,導入応力の上昇にともない増加する様相が確認された。また、応力作用下におけるコンクリートの耐凍害性については、スケーリング劣化の進行を抑制する劣化抑制領域(応力強度比10~30%)が存在し,特に応力強度比20%付近での劣化抑制効果が大きいことが確認されたが、各応力強度比における吸水量とスケーリング量の間に相関性を見出すことはできなかった。しかし細孔構造評価において、細孔径200~4000nmの領域に着目した場合、劣化前の健全な試験体の細孔量と比較して応力強度比60%では細孔量の増加が顕著となり、応力強度比0%および30%は僅かな増加にとどまることが明らかとなった。これに対し、応力強度比20%では健全供試体と比較して僅かに減少する様相が見られ,スケーリング発生と傾向が酷似することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年度は、交付申請書に記載した研究実施計画をベースとして、随時研究計画の見直しを行いながら、応力作用下におけるコンクリートの劣化進行メカニズムの解明に向け各種耐久性試験および分析を実施した。特に今年度は、昨年度に実施した各種耐久性能試験(① 各種耐久性(マクロ的物性値)に関する評価および分析、② 載荷によるミクロ的組織構造(気泡・細孔)の変化に関する評価および分析)の再現実験としての位置付けで各種実験を行い、検討を進めてきた。しかし、研究実績の概要にも示したように実験の再現性や影響因子と思われる指標との相関性に現段階で説明できない部分があり研究成果として纏めるまでには至らなかった。これらの経緯から、再現実験における結果を改めて検証する必要性が高いと判断し「補助事業期間延長承認申請」を行い、事業期間の延長(次年度1年間)が認められている。事業期間の延長が認められた次年度は、今年度に実施した再現実験の方法や分析手法を改めて精査し、追加の検証実験を行うことで事象の解明に努めるとともに、これらの成果を踏まえ、学会参加および論文投稿を行いたいと考えている。 以上より、今年度実施した再現実験の不整合や実験方法および分析手法の精査の必要性を踏まえ、現段階における研究の進捗度を自己評価すると、「やや遅れている。」と判断せざるを得ない。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、特に応力作用下におけるコンクリートの物質透過性および耐凍害性(スケーリング抵抗性)について、応力強度比をパラメーターとして変化させた試験体を対象に再度、再現実験を行う。これにより、平成26年度および平成27年度の研究で得られた知見に関する再現性について検証するとともに、関連する実験データの蓄積を行う。さらに、物質透過性および耐凍害性に影響する因子として検討してきた気泡特性や細孔構造についても再度検証する必要があるため、気泡組織測定や細孔構造特性評価を実施して、ミクロ的な組織構造変化に関するデータの収集および分析を実施する。これにより、応力強度比や劣化進行速度、気泡特性や細孔構造を関連付けた検討を行い、導入応力が変化する過程にけるコンクリート内部組織の変化を明らかにするとともに、応力導入状態のコンクリートにおける劣化進行のメカニズムについてさらに詳細に検討を進める。また、これまでの研究において、応力作用時に劣化進行が抑制される特異的な様相を示す領域が存在することを確認しているが、現段階ではセメントマトリクスにおける微細空隙の閉塞に起因する現象ではないかと推察している。そこで、この点についても検討を進めるため、コンクリートの変位や遷移帯におけるマイクロクラックの発生状況を調査し,応力導入時におけるコンクリート組織の変化について検討を行う。
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