有機薄膜太陽電池と色素増感型太陽電池の特徴を複合させた低コスト、且つ高透過性の全塗布型有機無機薄膜太陽電池の開発を目的とした。平成25年度は酸化物半導体プリカーサーを用いて発電/電荷輸送層の相分離構造制御を発電層形成用インク主成分である溶媒のSP値を指標として行い、高SP値の溶媒を用いることにより低SP値溶媒を用いた場合に比べ、太陽電池素子の短絡電流密度が大幅に増加することを示した。平成26年度は更なる高効率化を目指し、酸化物半導体プリカーサーの分子構造に着目した。その結果、分子構造により発電層の相分離構造が大きく変わることを確認し、特にチタニウムイソプロポキシドとチタニウムブトキシドを用いた場合に高いJscを得ることができ、ポリマーの相分離サイズが励起子拡散長である20nm程度となっていることSEMの観察により明らかにした。一方、光吸収量の増加による更なる発電特性の向上を目指し、発電層の厚膜化を行った。その結果、短絡電流密度の低下が起こり、従来のC60PCBMに比べ、電子輸送性が低いことが実験的に明らかとなった。そこで当年度はチタンアルコキシド中への酸化チタンナノ粒子の添加、混合により、電子輸送性の改善を目指した。湿式のビーズミルを用いて、種々の分散剤との組み合わせにより、チタンアルコキシド中への分散を検討した結果、平均粒子径が数10nmとなる分散条件の確立に成功。電子輸送性の改善により、従来の発電層を用いた場合に比べ、エネルギーレベルの整合性や発電層との親和性を考慮したバッファー層との組み合わせにより、最大2.6倍の発電効率の改善が実現した。光吸収端波長が900nm程度である電子アクセプター材料を用いた発電素子とのタンデム化により高い光電変換効率が得られることを発電層の光吸収スペクトより説明することができた。
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