研究概要 |
身近な元素(銅,ゲルマニウム,硫黄)から構成される新規な三元化合物Cu2GeS3を光吸収層とした薄膜太陽電池の作製を試みた。 はじめにCu/Ge積層プリカーサの硫化によるCu2GeS3薄膜の作製を実施し,Cu2GeS3のバンドギャップがEg=1.5-1.6eVであることを明らかにするとともに,n型CdS薄膜とのヘテロ接合の形成による太陽電池素子化を行いVoc=380mV, Jsc=12.6mA/cm2, F.F.=0.355, PCE=1.70%を得た。 このようにして作製したCu2GeS3薄膜には,SEMによる観察からMo下部電極とCu2GeS3界面に大きな空隙が多く見られた。この空隙は硫化時の体積膨張やゲルマニウム硫化物の昇華によって生じているものと推察され,光電変換効率の向上にはこれらの抑制が必要である。そこで,Cu2GeS3を蒸着源に用いた真空蒸着によるCu2GeS3薄膜の作製を試み,Cu/Geプリカーサの硫化時の問題の解決を試みた。 Cu, Ge, Sを原料に用いて真空封入した石英アンプル中で加熱溶融し,合成されたCu2GeS3を蒸着源として用いた真空蒸着法によりSLG基板上に硫化物プリカーサを作製した。成膜したままの試料はXRD測定において明瞭な回折ピークは得られなかったが,この試料を赤外線加熱炉の石英チャンバー内に固体硫黄と共に入れ,580度で加熱・硫化処理を行うことで,Cu2GeS3の形成を確認した。 今後,SLG/Mo基板上への成膜を試み,このようにして作製されたCu2GeS3薄膜を用いて太陽電池素子化を試みる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
硫化物を蒸発源として用いる薄膜作製の前段階として,Cu/Ge積層プリカーサの硫化によるCu2GeS3薄膜の作製を実施し,Cu2GeS3のバンドギャップがEg=1.5-1.6eVであることを明らかにするとともに,n型CdS薄膜とのヘテロ接合の形成による太陽電池素子化を行いPCE=1.7%を得ており,Cu2GeS3が薄膜太陽電池の光吸収層として十分な性能を示すことを明らかにした。 また,更なるCu2GeS3薄膜の高品質化を目指して硫化物Cu2GeS3の高純度バルク試料をCu,Ge,Sから石英アンプル中で加熱溶融することで,合成に成功した。 得られたCu2GeS3試料を用いた抵抗加熱による真空蒸着法を用いてSLG基板上へ薄膜の作製を行い,成膜したままではCu2GeS3薄膜は得られなかったが,これを硫化物プリカーサとして用いて赤外線加熱炉にて硫黄蒸気中で熱処理することでCu2GeS3薄膜を作製することに成功した。
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