研究実績の概要 |
本研究の目的は, あらかじめ分類するカテゴリが用意されているわけではなく, 顔認証などのように逐次的にカテゴリが追加される環境を考慮したパターン認識システムの開発と顔認証などの実問題への応用である. 平成25年度までに, 本システムの学習アルゴリズムを開発し, 顔認証やベンチマークデータセットにおいてその有効性を示した. 平成26年度は以下の研究実績が得られた. (1) 汎化能力の指標となる目的関数値に基づいた特徴抽出・選択によるパターン認識システムの識別性能向上方式を開発した. 平成25年度までに開発したシステムではカテゴリが追加される度に特徴抽出・選択を行うことにより, カテゴリごとに部分空間を生成していたが, これらの部分空間は他のカテゴリとの分離を考慮せず生成しているため, 一括学習を行うシステムに比べて識別精度が低くなる傾向があり, その問題点を目的関数値による抽出・選択により解消し, システムの識別精度の向上へとつなげた. このようにカテゴリ追加学習を行う環境においても一括学習と同程度の識別精度を保つことにより, 実問題において使用用途が非常に広がると考えられる. この学習アルゴリズムにおいて情報処理学会論文誌(数理モデル化と応用)へ採択されており, その他にも4件の国内学界における発表を行った. (2) (1)のシステムを導入した顔認証システムの開発を行った. 上記のシステムの開発により, 平成25年度の研究と同様の52名の顔画像ファイルを基に実験を行ったところ, 識別精度が向上されたことが確認できた. 予め人為的に設定するパラメータにより, 向上幅は異なるが, 大半のパラメータにおいてもWelchのt検定により有意差が見受けられ, 実問題への有用性が増したと考えられる.
2年にまたぐ本研究により, 当初の目的であるカテゴリ追加学習型パターン認識システムの開発と顔認証などへの応用を実現させたといえる.
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