研究課題/領域番号 |
25871034
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 福井工業高等専門学校 |
研究代表者 |
金田 直人 福井工業高等専門学校, その他部局等, 講師 (10507148)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 繊維機械 / 仮撚 / ゆらぎ / 糸張力 / 捲縮 / 日本 |
研究概要 |
糸に羊毛のような捲縮(嵩高性)を付加できる仮撚加工法において,加工時に生ずる糸張力は,製品の品質および糸の物性値にも大きく影響を及ぼす重要な要素である.仮撚加工法において,これまでの加工糸の生産は,生産速度を変えずに一定速度で行うのが一般的であった.一定速度で生産する加工糸の品質は,原糸の糸種の物性にほぼ依存する.研究代表者はこれまでディスクフリクション仮撚機を用いて加工中の糸張力が異なると加工後の糸の捲縮も異なることを報告している. 平成25年度の研究では,一定速度で生産していた仮撚加工法の生産速度を任意に変化させ,糸張力も任意に変化させることで連続的に捲縮が異なる(ゆらぎを有する)加工糸の生産方法について開発を行った.研究を遂行するにあたり,仮撚加工機の動力源に,連続的かつ任意に回転速度を変化させることができるモータを設置した.これにより加工中に発生する糸張力も変動するため,糸とディスク間の摩擦力および撚りトルクにも影響を与え,捲縮の異なる糸 を生産することが可能となった.さらに,これらの制御機器を用いることで加工糸の生産条件を大幅に広げることが可能となった. また,加工糸の生産とともに,張力計を用いて糸張力変動を連続的に確認し,糸張力と糸の捲縮との相互関係を解明した結果,糸太さと糸張力には相互関係があることが明らかとなった.しかしながら,糸太さは,原糸に設定されている最適延伸比を超えると,糸太さの増加は困難となり,糸太さに変動を与える場合,延伸比の範囲が限定されることがわかった. 以上の内容について,国内学会および国際会議にて発表を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度では,研究計画通り進めることができたといえる.しかしながら,糸太さにゆらぎを付加されるメカニズムを実験的に解明したにすぎず,理論的な解明がこれからの課題となるといえる.
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今後の研究の推進方策 |
加工糸は解撚されることで捲縮が付加されるが,撚りは完全に解かれることは無く,幾らかは残留している.その結果,加工糸の糸太さも不均一になりやすいと考えられる.加工糸にゆらぎを付加させた場合,同特性を知る上で見かけ糸太さの正確な測定が必要となる.そこで平成26年度の研究では,まず生産した加工糸の形状を画像センサ等を用いて撮影する.そして,撮影画像から見かけ糸太さを評価する.同方法によって加工糸の見かけ糸太さを連続的かつ広範囲で測定が可能となる.また,糸の形状をより正確に把握するため,画像センサ等を複数台設置しすることで糸断面の形状を360°撮影可能な評価システムも構築する.ここで得られたゆらぎ特性を確認することで,生産条件におけるゆらぎ特性のメカニズムを明らかにでき,多種多様な条件での意匠加工糸の生産を可能にする.加工糸にゆらぎを任意に付加できることが確認できたら,次に人体に癒しを与えるといわれている「1/fゆらぎ」を加工糸に付加することを試みる.世界中においても1/fゆらぎを有した仮撚加工糸の例は無く,新種の糸を展開できることが期待される.その結果,有益な情報を国内の繊維産業に提供することが出来ると考えられる. 以上より,糸の物性値を操作可能になるため,繊維産業における最終形態である織物製品等の物性値も操作可能になると期待できる.そこで,意匠加 工糸を用いた繊維製品の物性値の変化ならびに人体への官能評価を行うことで,定性的な観点からの影響を明らかにする.
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