平成27年度の研究では、以下の通りの成果が得られた。
1) シリカガラスとアルカリ金属塩との反応において、温度に対する深さ依存性で生じる900℃~1000℃付近の活性化エネルギーについて、結晶相との相関を調べた。その結果、SiO2の結晶相の構造変化が影響していることが示唆された。また、アルカリ金属塩(NaCl)とシリカガラスとの失透の関係において、空気中、酸素中、窒素中、真空中で失透の状態を調べたところ、結晶化の進行は雰囲気中に含まれる微量のH2Oが不純物との界面でNaClの分解を促進することにより、シリカガラスと反応しやすい状況が形成されることが分かった。
2) 固体電解質が示すイオン伝導度の温度依存性について、以前の研究で提案された粘性に対する結合強度・配位数揺らぎモデルを拡張し、非アレニウス型イオン伝導度を記述する表式を得た。このモデルによると、イオン伝導度の非アレニウス性は、イオン拡散経路上に異なる結合力および配位数のサイトが存在することに起源をもつ。また、当モデルに基づく解析の結果、2元化合物において6配位-4配位の構造変化が生じるイオン度の閾値からの逸脱の度合いは、結合力と配位数の揺らぎと相関をもつことが示された。加えて、銀系イオン伝導体とペロブスカイト構造をもつリチウム系イオン伝導体では、異なる相関を示すことが分かった。
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