研究課題/領域番号 |
25871037
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研究機関 | 神戸市立工業高等専門学校 |
研究代表者 |
早稲田 一嘉 神戸市立工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (20390479)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | オープンコースウェア(オープンエデュケーション) / STEM教育 / グローバル化 / ものづくり教育 / 機械工学 / 工学教育 |
研究実績の概要 |
ペーパークラフトの開発と平行して,風車模型を用いて機械工学・電子・電気工学を実践的に学ぶことが可能な教材へと拡張を進めているが,本年度は Arduino互換マイコンボードとプログラミングによる風車データ取得システムを構築する手段を電子工学科2年生の実験実習の授業に取り入れ,「エンジニアリングデザイン実践教材」としての妥当性の確認をした. 水平軸型ペーパークラフト風車においてトルクやスラスト荷重の実測と解析結果の比較ができる可能性も見出され,機械工学の教材化することを検討できる段階になった.本校学生の卒業研究および機械学会年次大会で報告した. また,ペーパークラフトでは難しいひねりのあるブレード形状を3DCADデータ化し,その他部品も設計し,3Dプリンタによる造形を試みた.具体的には歯車を用いた動力伝達部では歯車のモジュール(歯の間隔)や歯すじ(平,はすば,やまば)が違う3Dプリンタ部品の造形を試みた.材料力学への興味を高めるために,風力によるブレードたわみの関係を実験とシミュレーションでとらえるための弾性材料による3Dプリンタブレードの造形を試みた. 風車や工作に関する公開講座は3回開催し,学生が主体的に公開講座などでコミュニケーション力を上げる機会を与えた.また,公開しているWebページは昨年度の国内と国外の比が約7:3(総アクセス約3500)であったのに対し,今年度は約3:7(総アクセス約5800)となり英語のWebページ開設による世界中からのアクセス増を確認した.さらに欧州宇宙機関(ESA)ポルトガルでのイベントへのペーパークラフトの提供を実現した. 成果の一部は3回の口頭発表,研究紀要1本を発表,また産業界へのアピールとして,国際産業フロンティアメッセ2015,平成27年度近畿地区7高専産学官マッチングフェアおよび高専女子フォーラム2015にてポスターを展示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に続き,ペーパークラフト風車を用いて公開講座を実施した.ペーパークラフト風車の内容の一部は,科研費の申請書類の項目にある「研究成果を社会・国民に発信する方法」でも挙げた通り日本語と英語のWebページにて一部提供することで成果を直接発信し,アクセス解析を導入することでアクセス(関心)があるのかのデータを収集した. 昨年に引き続き電子工学科2年生の実験実習にて「Arduino互換マイコンボードとプログラミングによる風車データ取得システムの構築」する課題を課した.また,大学の研究室(流体力学・風力関連)のゼミにて「ペーパークラフト風車の組立・改良とQBladeによる解析とを比較する」内容を実践してもらった. また,カリキュラム変更の関係で平成28年度以降に延期していた機械工学科での「風車を用いたエンジニアリングデザイン実践教材(授業での題目:風力タービン(風車)モデルを用いたエンジニアリング演習)」授業の準備が整い,学科の了承を経てカリキュラムに取り入れ,H28年度から実際に運用を始める(本報告書作成時にはすでに実施済み).目的のひとつである「理論と実践」の体験を通して,エンジニアリングへとつながるPDCAサイクルを実体験させることを,まだ深い加工技術や理論の理解がない段階の学生に対して授業時間内にて提供を開始しできるようになった. 「サスティナブルな教育システム」として掲げた「社会貢献活動(公開講座)」と「工学教育」の一部は構築しつつある.一方で「産業」として企業との連携を掲げた部分については,過去具体的な成果はなかったものの,国際産業フロンティアメッセ2015,平成27年度近畿地区7高専産学官マッチングフェアおよび高専女子フォーラム2015にてポスターを展示する機会を得て,企業関係者に開発段階の教材をアピールすることができた.
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今後の研究の推進方策 |
過去と同様に引き続き,公開講座の準備物のパッケージ化に充てる予定であった予算は,試作の材料費や当初計画よりも学生アシスタント数を増加させたほうがよいと分かったため,学生への謝金へ配分する. 昨年に引き続きエネルギー政策,特に風力発電に注力している自治体などを通して風車のペーパークラフト模型を工作する公開講座の実施し,参加者にアンケートを実施し,アンケートの精度を上げる.また,過去に開設したWebページの英語ページを充実させ,さらにエンジニアリングデザイン向けの教材のコンテンツ公開も目指す. 機械工学科カリキュラム変更に伴う教材として導入した「風車を用いたエンジニアリングデザイン実践教材」の改良に努める.購入計画に含まれていた風速計などは,3Dプリンタによる部品作成と購入計画に含まれていたArduinoマイコンボードにて代替できそうであることが分かったので,予定の予算を消化せず平成28年度に繰り越す金額は多いが,その分Arduinoおよびその制御に使用するパソコン,3Dプリンタを多く購入可能になりエンジニアリングデザイン関連の授業実施人数を増加させるなどが可能になると考える. 成果の一部は研究講演会などで発表する(日本機械学会年次大会の口頭発表は申込み済み).昨年度の日本工学教育協会(JSEE)で論文投稿の推薦をいただいた,垂直軸型風車の内容に関しては,まだ不完全な部分があるので,開発が進みまとまった成果があがり次第,論文としてまとめる.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度に実施計画をしていた機械工学科での「風車を用いたエンジニアリングデザイン実践教材」授業は他の実習系科目との兼ね合いや機械工学科カリキュラム変更の関係で平成28年度から実施する.また,神戸市学校の情報端末がノートPCからタッチパネル端末に変更され,その放出品を得ることができたため,当初予定であったパソコン購入計画は変更した.風速計を学生数分購入する代わりに,Arduinoマイコンボードにて風速計を作成することも電子工学科の授業にて教材として有効性が見えてきたと考え,計画を変更し支出が少なかった.また,公開講座を実施したが,過去と同様に主催者側でも少額ながら独自に公開講座予算が確保されておりその関係で支出が予定よりも少なかった. 旅費については申請時に学会発表の開催場所などが確定しておらず,見込みで申請したために予定の旅費との差額がでた.
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次年度使用額の使用計画 |
平成25~27年度と同様な公開講座は平成28年度以降にも実施予定である.当初計画よりも講座参加者数に対する学生アシスタント数を増加させたほうがよいと分かったため,学生への謝金(人件費)へ多く配分する予定である.旅費については学会開催場所が遠方の見込みであるので未使用分を旅費として支出する予定である. 現在3Dプリンタは発展途上であり価格は下りつつあるが,性能が安定しておらず購入を可能な限り遅らせてきたが,ペーパークラフト風車から3Dプリンタ風車への連携する教材を開発しており,本校のカリキュラムにてエンジニアリングデザイン関連の授業向けに,3Dプリンタを複数台購入予定であり大きな問題はないと考える.
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備考 |
研究計画通りに成果の一部はWebで公開をした.デジタルコンテンツの権利管理として産業財産権の代わりに「クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CCライセンス)」を採用した.また,このコンテンツとセットで利用する解析ソフトウェアのQBladeはGPL(General Public License)にて公開していることから,同様な考え方であるCCライセンスを採用した.
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