研究課題
平成27年度は,(1)SMAアクチュエータとハンド部の試作および(2)手首および前腕部の試作を実施した.以下に,それらの成果を列挙する.(1)小児用前腕動力義手の構造について,手指・手掌は手掌全体で包み込む動作と,親指・人差し指・中指の3指を使った摘む動作の2種類の把持動作を行うことができる.また,人差し指と中指はSMAアクチュエータで駆動させ,親指を装着者が受動的に動かせるようにした.そして,薬指と小指は,支えの役割があるので外力で動く仕組みとした.手指は,超弾性のSMA板ばねで屈曲,SMAアクチュエータでワイヤを牽引することで伸展動作を行う.また,親指は柔軟性があり,曲げた状態を維持できるフレキシブルチューブを用いた.試作した義手とSMAアクチュエータの評価を行ったところ,設計通りの動きが出来なかった.その原因として,義手の4指は板ばねの力の不足やたわみ,親指は取り付けるために切断したフレキシブルチューブが曲がりにくくなることが考えられる.また,SMAアクチュエータは,SMAの取り付け時に両側から押される力が発生したからだと考えられる.(2)手首は,掌屈・背屈の動作に加え,物体を把持した状態を維持する機構を設けた.前腕は,回外・回内動作を行っているが,健常な部位で代替可能であると判断し,内部にSMAアクチュエータ駆動用の回路や電源を搭載する機構とした.これらを製作し評価試験を行ったところ,前腕は収納スペースとして十分に機能したが,手首は耐荷重の面で問題が残る結果となった.指の把持を行うSMAアクチュエータの制御回路の製作においては,筋電センサを用いた制御手法を設計した.入力の処理にはArduinoを使用し,増幅回路で電流を増幅し,SMAアクチュエータを制御した.応答速度の評価試験の結果,伝達の遅延はほぼ無く,応答速度の良いものであることがわかった.
3: やや遅れている
当初の計画では,平成27年度の目標は,小児用前腕動力義手の試作とモデルケースによる有用性評価であった.小児用前腕動力義手の試作では,前腕部からハンド部までの一連の試作は完了したが,義手の動作が不十分となった.このことから,モデルケースによる有用性評価に至ることができなった.これらのことから,やや遅れていると判断している.
義手の動作が不十分となった原因は,義手の構造とアクチュエータの性能による部分が大きいと考えている.そこで,平成28年度は,義手の構造の見直しと再設計,手首および前腕部の再検討を材料の選定からやり直す.またアクチュエータとして利用してSMAアクチュエータの性能を向上させることは,これまでの取り組みにより非常に困難であるということがわかったため,新たに空気圧ソフトアクチュエータを駆動源として用いることができるか検討する.
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International Journal of Innovations in Engineering and Technology
巻: Special Issue, ACEIAT & JTSTE ページ: pp.57~63