平成28年度は,柔軟な指の設計および試作を行い,柔軟指を持つ小児用前腕動力義手の動作評価を実施した.以下に,それらの成果を列挙する. 小児用の前腕動力義手の指の構造に着目し,柔軟な素材により指を構成することで,機能性と安全性を持つ小児用前腕動力義手を検討した.義手の動作は,日常生活動作とコミュニケーション動作の2種類を想定した.具体的な動作として日常生活動作では,握力把握(物体を握って掴む動作),精密把握(物体を指先で摘まむ動作)を行い,日常生活動作を応用した両手動作(両手を使用して行う動作)とした.またコミュニケーション動作では,意思伝達手段として,グー・チョキ・パーと指差しを行うことにした. 手指を柔軟樹脂のカバーで覆い,指関節にはシリコンゴム(硬度50)を用いた.特に指関節に柔軟性を持たせ,指への多方向からの過度な力を逃がす事で,義手が衝突した時に他者や物に危害を与えにくい構造とし,安全性を高めた.また,第4,5指は同時駆動,それ以外は独立駆動とした.指の動作原理は,屈曲状態からワイヤを牽引して指関節のシリコンゴムが変形することにより伸展し,張力が無くなると,シリコンゴムの弾性力により指形状が元に戻り,物体把持を行う.義手の大きさは,指を伸展した状態で全長340mm,手掌の幅が64mm,手掌の厚さが20mmである.また,義手の把持力は,3.8Nであった. 義手の握力把握,精密把握,両手動作,ジェスチャー,指差しについて,実験者が指に取り付けられたワイヤを駆動させることで評価した.実験結果から,握力・精密把握では,最大把握重量は150gであった.しかし,手掌より大きく手が包み込めない物体,紙の様に薄い物体では把握不可能であった.また,両手動作では,物体を抑えて動作できることを確認した.ジェスチャー・指差しでは,想定した全ての動作が可能であった.
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