近年,ナノ・マイクロデバイスの除熱や熱管理が重要となっており,凝縮においては高い熱伝達率が得られる滴状凝縮の利用が望まれる.そこでは液滴半径が数ミクロン程度のものが伝熱に最も寄与することが明らかになっているため,微小液滴を活用する濡れ性こう配マイクロ複合伝熱面を作製し,その性能を検討した.また液滴の離脱に及ぼす蒸気流速の影響を調べ,濡れ性こう配による液滴排除効果との関連について検討した.これまでに,濡れ性こう配を形成したマイクロ複合伝熱面と,濡れ性こう配を形成せず,親水面と疎水面を交互に配置した伝熱面上の熱輸送特性を比較した結果,濡れ性こう配による液滴排除効果によって伝熱特性が向上することを示した.そこで熱輸送特性の促進に,より効果的な濡れ性こう配の形状を明らかにするためにマイクロ複合面の上流側疎水面幅が60ミクロンから下流側の幅15ミクロンへと変化する濡れ性こう配(こう配率2.25ミクロン/mm,以下b=60ミクロン)と,上流側疎水面幅が200ミクロンから下流側の幅50ミクロンへと変化する濡れ性こう配(こう配率7.5ミクロン/mm,以下b=200ミクロン)を用いて実験・比較を行った.その結果,b=200ミクロンと,こう配率を高めることは液滴の積極的な離脱に効果的であることが分かった.しかしながら,離脱半径が大きくなるため,b=60ミクロンのマイクロ複合伝熱面と比較して滴状凝縮のサイクルは低下し,熱輸送特性としては同程度を示している.すなわち,液滴排除効果と滴状凝縮のサイクルのバランスを最適化する構造設計による凝縮熱輸送特性の促進を実現するために,濡れ性こう配の液滴排出速度などの検討が必要になると考えられる.また,蒸気せん断力の液滴排除への影響を検討する必要があったため,蒸気流速を変化させた実験を行ったが,蒸気流速による熱輸送の変化は観察されなかった.
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