研究課題/領域番号 |
25871051
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 国立情報学研究所 |
研究代表者 |
小林 哲郎 国立情報学研究所, 情報社会相関研究系, 准教授 (60455194)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 政治的学習 / オンラインニュース / ソーシャルメディア / ログ解析 / フィールド実験 / 社会調査 |
研究概要 |
平成25年度は、ネットニュース閲覧履歴ログのデータマイニングと社会調査を融合する手法を用いて、ネットニュース接触と政治的知識量の相関関係の測定を行うことを予定していた。2012年衆院選時にヤフー株式会社より共同研究の申し出があり、ヤフーニュース閲覧履歴ログと社会調査を融合した分析を行う機会を得た。さらに、2013年参院選においても引き続き同様の共同研究を行いデータを取得した。これらのデータを用いて、「Yahoo!JAPANの閲覧が多い群では、政治的関心が低くても(あるいはエンターテイメント志向が高くても)、政治的知識のレベルが落ちない」という仮説の検証を行った。その結果、Yahoo! JAPANのトップページに掲載される「Yahoo!ニュース」のトピックス見出しを閲覧するだけで、政治に関する知識の学習効果が生じることが明らかとなった。さらに、「Yahoo!ニュース」への接触は、政治的関心の高い層と低い層の、政治に関する知識ギャップの縮小に貢献しており、特に政治的関心の低い層が政治的リーダーのパーソナリティに関する情報を得るためのプラットフォームとして機能していることが明らかとなった。ヤフー社との共同研究によって、計画されていたネットレイティングス社による「ターゲットセグメント調査」を実施する必要がなくなったため研究対象を拡大し、2013年に解禁されたネット選挙における政治的学習効果を検討する目的でフィールド実験を実施した。ツイッター利用者から実験参加者を抽出し、安倍晋三・細野豪志・橋下徹の3氏をフォローする処置群と、安倍晋三・細野豪志の2氏のみをフォローする統制群に無作為配置し、参院選投票日前約1か月の間ふだん通りに利用することを求めた。その結果、橋下徹氏のツイートへの接触は争点知識の学習効果を持っていないことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ヤフー社との共同研究によって、第1の研究目的である「ネットニュース閲覧履歴ログの解析と社会調査の融合的手法を用いた、ネットニュース接触による副産物的な政治的学習の実証」は十分に達成されたと考えられる。閲覧ログと社会調査を組み合わせたデータを2012年と2013年の2つの国政選挙時に取得できたことで、精緻な分析を可能にする分厚いデータがそろった。さらに、2013年参院選よりネット選挙が解禁されたことにあわせて、オンラインニュースだけでなくソーシャルメディアを使った選挙キャンペーンを通した政治的学習についてもフィールド実験を行い、当初の予定以上の成果を上げることができた。ヤフー社との共同研究はすでに2度のプレスリリースと1つのブックチャプターを通して発表されており、現在投稿論文にまとめる作業を行っている。ソーシャルメディアを用いたフィールド実験については2014年1月のSouthern Political Associationで発表されたほか、Political Communication誌にて査読中である。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は「接触するネットニュース情報を操作するフィールド実験を用いた、ネットニュース接触と政治的知識量の因果関係の同定」を実施する予定である。実験に必要となるソフトウェアの作成については目処がついており、問題なく実施できる見込みである。ただし研究経費は当初計画の3分の2程度に減額されているため、実験の規模は縮小する可能性がある。
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