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2014 年度 実施状況報告書

多倍長精度密度行列繰込群による量子エラーモデルの再考

研究課題

研究課題/領域番号 25871052
研究機関豊橋技術科学大学

研究代表者

齋藤 暁  豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70513068)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワード量子計算 / 量子誤り / 多倍長精度計算 / 行列積状態 / 密度行列繰込群
研究実績の概要

平成26年度は平成25年度に引き続き、行列積状態を用いる多倍長精度の量子状態時間発展シミュレーションライブラリの改善(主に安定性の向上)に努めた。また、エラーモデルの研究に進展があった:量子ゲートの実装誤りとして、そのゲートを実現するためのハミルトニアンのパラメータおよび時間幅に、平均ゼロのガウス分布をするエラーが入るモデルを扱った。そのモデルの下で、量子フーリエ変換とそれをベースとする算術回路、およびDeutsch-Jozsaアルゴリズムをシミュレーションし、エラーの標準偏差σと終状態における誤差の関係を見た。(終状態における誤差としては理想的な場合のそれとのTrace Distanceを採用した。)σが小さい範囲では概ね多項式の関係であり想定通りの結果となった。ただし、100量子ビット程度の幅の回路の場合、誤差を正しくシミュレーションするには浮動小数点演算精度が200ビット精度以上必要であった。倍精度程度では、精度不足による数値誤差が支配的であり、終状態の誤差を正しくシミュレートできないことが明らかになった。
なお、多倍長精度を必要としない簡便なエラーシミュレーションとして、指導した大学院生に量子ウォークに位相反転エラーが入った場合のBang-bangコントロールによる誤り抑制のシミュレーションを行わせた。ここでもBang-bangパルスのパラメータにガウス分布をするエラーが入る場合を考えた。GPUを用いた並列計算で平均的な状態の確率分布を算出した。結果としては、位相反転エラーの影響で古典ウォークの分布となっていたものが、不完全なBang-bangパルスでも高頻度で照射することによって、元の量子ウォークの分布に近づけることができるという妥当な結果となった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

ゲート操作の較正エラーについては、上述のようにプログラム化でき、シミュレーションも妥当な結果が出ている。ただ、予定では測定基底の誤りも研究対象としていたが、これはまだ手を付けていない。測定基底の誤りについても早急に定式化およびプログラム化して実装をし、妥当なシミュレーション結果となるか確認せねばならない。
また、これまでのシミュレーションでは100量子ビット幅程度の回路について行っているが、最終的には少なくとも500量子ビット幅程度の回路は現実的な時間内でシミュレートせねばならない。というのは、エラー訂正符号の符号語を用いてアルゴリズムを実行した場合の量子エラーをシミュレートせねば当初の目的が達せられないからである。そのために、ユーザー側ではなくライブラリ自体を並列化すべく実装を試みているものの、多倍長精度であるがゆえの困難さがあり、現在までの所、進捗は遅い。

今後の研究の推進方策

平成26年度の研究により、量子ゲートの較正誤りに起因する誤差を時間依存密度行列繰込群を用いて数値解析するためには、多倍長精度での計算が必須であることが明らかになった。最終年度には、少なくとも、量子エラーの数値解析において計算精度の重要性を示す事例を集めて論文として公表することはできよう。
当初の研究計画を考えれば、エラー訂正符号によって符号化した上で量子アルゴリズムをシミュレートし、量子エラーが訂正可能あるいは不可能となる場合を数値的に評価せねばならない。しかし、ライブラリの並列化の進捗状況によっては、大規模な回路については評価が完了しない可能性がある。本来であれば、量子回路のサイズに対する誤差蓄積の依存性を調査する必要があるが、サイズ依存性の調査をひとまず棚上げにして研究を進めることも一考の余地がある。
長距離相関を持ったエラーの影響についての研究は、昨年度の推進方策に書いた通り進めていく。量子ゲートのハミルトニアンのパラメータに入る誤差については、長距離で相関を持つ場合をシミュレートするのは容易である。また、複数の量子ビットが共通の熱浴系を介して相関を持つ場合も容易にシミュレートできよう。
なお、量子アルゴリズムの中には、もともと混合の度合いの大きな状態を使うものや、スピンLiouville空間で動作するものもある。これらは、通常の純粋状態を使うものに比べて、量子エラーに対して耐性が高いと予想される。この点について数値的に評価してみたい。

次年度使用額が生じた理由

図書と航空券の購入金額が想定よりもやや安価であったため生じたものであり、支出額はほぼ計画通りであったと言える。

次年度使用額の使用計画

繰り越した分の金額は図書の購入に充てる予定である。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2015 2014 その他

すべて 学会発表 (6件) 備考 (2件)

  • [学会発表] GPUを用いた量子ウォークのエラー抑制シミュレーション2015

    • 著者名/発表者名
      山田真理, 齋藤暁, 濱田信次, 関野秀男
    • 学会等名
      電子情報通信学会2015年総合大会
    • 発表場所
      立命館大学, 滋賀県草津市
    • 年月日
      2015-03-10 – 2015-03-13
  • [学会発表] アンサンブル量子DA変換における量子相関2015

    • 著者名/発表者名
      齋藤暁
    • 学会等名
      第4回QUATUO研究会
    • 発表場所
      高知工科大学, 高知県香美市
    • 年月日
      2015-01-11 – 2015-01-12
  • [学会発表] Recent progress in a multiprecision MPS simulation library for quantum information science2014

    • 著者名/発表者名
      Akira SaiToh
    • 学会等名
      4th International Workshop on Massively Parallel Programming Now in Quantum Chemistry and Physics - Toward post-K computers
    • 発表場所
      東京大学, 東京都文京区
    • 年月日
      2014-11-23 – 2014-11-24
  • [学会発表] Highly accurate numerical evaluation of quantum errors in the circuit model2014

    • 著者名/発表者名
      Akira SaiToh
    • 学会等名
      International Iran Conference on Quantum Information 2014
    • 発表場所
      Isfahan University of Technology, Isfahan, Iran
    • 年月日
      2014-09-06 – 2014-09-10
  • [学会発表] 量子緩和を利用した量子DA変換アルゴリズム2014

    • 著者名/発表者名
      齋藤暁
    • 学会等名
      コンピュテーション研究会 (信学技報 vol.114, no.199, COMP2014-21, pp.43-49)
    • 発表場所
      豊橋技術科学大学, 愛知県豊橋市
    • 年月日
      2014-09-02
  • [学会発表] Proposal of a quantum digital-to-analog converter for bulk-ensemble machines2014

    • 著者名/発表者名
      Akira SaiToh
    • 学会等名
      Physics of Quantum Information Processing (Satellite Workshop of AQIS 2014)
    • 発表場所
      大阪大学, 大阪府豊中市
    • 年月日
      2014-08-25 – 2014-08-26
  • [備考] ZKCM Library & ZKCM_QC Library

    • URL

      http://zkcm.sf.net/

  • [備考] Akira SaiToh's website

    • URL

      http://silqcs.org/~saitoh/

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公開日: 2016-06-01  

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