研究課題/領域番号 |
25871053
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研究機関 | 国立情報学研究所 |
研究代表者 |
小関 健太 国立情報学研究所, ビッグデータ数理国際研究センター, 特任助教 (10649122)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | Hamiltonian 閉路 / Tutte 閉路 / トーラス上のグラフ / 全域木 |
研究実績の概要 |
平成27年度,平成25年度,26年度に引き続き,ハミルトン閉路に関する研究を行った.最大の研究成果は,「5-connected toroidal graphs are Hamiltonian-connected」の題目で発表した論文である (「研究発表,雑誌論文」項の 6番目の論文).この論文で 「トーラス上の 5-連結グラフはハミルトン-連結である」という結果を示しており,本研究の目的である 「閉曲面上のグラフのハミルトン性」に関して,大きな進展が見られた.特にその証明では,申請書にも記した Tutte 閉路(道) の存在を,既存の証明手法を拡張する形で示しており,手法という意味でも大きな進展があったと考えている.
また,平成27年度は,閉曲面上のグラフのハミルトン性と関連の深い閉曲面上のグラフの彩色性に関しても研究を行った.同項 3番目,4番目の2編の論文では,どちらもある種の彩色が存在するための必要十分条件を与えている.これは,Tait による 「平面の3-連結 3-正則グラフがハミルトン閉路を持つならば,その双対のグラフは頂点 4彩色を持つ」 という4色定理のための必要十分条件に対応したものであり,ハミルトン閉路に関連した構造の,ある種の応用を与えている.また,これは閉曲面のトポロジー的な性質と深く関連しており,そのような性質からハミルトン性を考察する,という研究内容に進展が見られた.
加えて,平面三角形分割のある種の全域木に関連した Halin グラフについての予想の反例(同 1番目の論文),平面グラフの全域木に関する問題の解決 (同 2番目の論文),禁止マイナーによるグラフ族の特徴付け (同 7番目の論文) などの成果も得ている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成 27年度は Tutte 閉路の議論の改良によってトーラス上のグラフ (または,それ以上の種数のグラフ) を考察し,当該分野の予想・未解決を解決することが目標であったが,これは「研究実績の概要」の項で述べた最初の結果によって達成された,と考えている.特に,それらは表面上の結果のみならず,Tutte 閉路 (道) の存在証明に対しての既存の証明手法の拡張や閉曲面のトポロジー的性質など,その内部で得られた知識・証明手法も重要なものであり,今後の研究へのさらなる応用が期待できる.
このように,平成27年度に多くの結果・知見を得ており,したがって,区分を 「(1) 当初の計画以上に進展している」 とした.
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は,Tutte 閉路(道) の改良を武器に,トーラス上,および他の種数の高い閉曲面上のグラフを中心に考察することで,さまざまな結果を得た.しかしながら,当該分野の大きな研究対象である Grunbaum と Nash-Williams の予想の解決には至っていないように,不十分な部分もある.Tutte 閉路 (道) のさらなる改良を行うことで,この解決を含めた当該分野の研究の推進を行いたい. また,平成28年度は本研究課題の最終年度であるため,いままでの研究をまとめ,統合することも重要である.例えば,当研究課題によって得られた重要な結果を含めた,当該分野の survey を執筆することなどを考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度は,共同研究者を訪ねて滞在する予定で旅費を申請した.その際,「C&C に参加,講演ほか」の項による出張の訪問先の一つである Matej Bel University より,現地での滞在費の支給を受けたため,支出総額が予算未満になった.
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次年度使用額の使用計画 |
残額は平成28年度における研究訪問・学会講演において使用する.
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