平成28年度は,前年度までに引き続いてハミルトン閉路・閉曲面上のグラフの研究を行うとともに,最終年度として研究の総括を行った. Cada 氏,千葉氏,善本氏らと,論文[1] では 3-正則グラフにおける,各連結成分が大きい支配偶部分グラフの存在について議論を行っている.与えられたグラフにおいて,各頂点の次数が偶数であるものを偶部分グラフと呼ぶ.特に,3-正則偶部分グラフの各成分は閉路となるため,偶部分グラフは閉路的な性質のある種の緩和といえる.また,その頂点集合を取り除くと独立頂点集合となる部分グラフを支配的であるという.線グラフのハミルトン閉路に存在性に関しては,その元グラフの辺支配的閉路の存在性の問題へと帰着できるため,辺支配的閉路に関しては多くの研究があるが,その一方で辺支配的な偶グラフの研究はその重要性にも関わらず,あまり研究がなされてこなかった.本研究はこの点を埋めており,3-連結 3-正則グラフには,各成分が 6 頂点以上持つような辺支配的偶部分グラフが存在することを示している.辺支配的閉路と同様に,3-正則グラフ上のハミルトン閉路や TSP などの応用が望めるものとなっている. また,閉曲面上のグラフについて,ハミルトン閉路との対応,およびそれ自身の興味として重要である,頂点彩色 (論文[2]) と完全マッチング (論文[3]) についても,それぞれ論文を出版している. 加えて,総括的な論文として,本分野の survey を Van Cleemput 氏・Zamfirescu 氏と共著で執筆し,投稿している.
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