研究課題/領域番号 |
25871054
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 国立天文台 |
研究代表者 |
銭谷 誠司 国立天文台, 理論研究部, 特任助教 (10623952)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 磁気リコネクション / 磁気拡散 / 非線形力学 / パルサー風 |
研究概要 |
H25年度は、パルサー終端衝撃波の構成要素である、無衝突磁気リコネクションの基本的な性質を理論・数値シミュレーションの両面で研究した。磁気リコネクションでは、磁力線が繋ぎ変わる中心付近に「磁気拡散領域」という重要領域が存在しているが、これら領域の定義について論争が続いている。今回、研究代表者らは、磁束の凍結状態(プラズマの理想状態とは違う)に関連づけて磁気拡散および磁気拡散領域を議論することを提案し、このアイデアをブラソフシミュレーションを使って検証した。また、粒子シミュレーションを使って、磁気拡散領域の外側のイオンの運動論的性質を調べた。イオンの速度分布関数と非線形力学のポアンカレ写像に対応することに注目して粒子運動の性質を議論したうえで、そもそもイオンがジャイロ回転しないためプラズマ理想条件(E + v_i x B = 0)が成り立っていないことを明らかにした。また、相対論衝撃波研究のための次世代粒子コードの開発を進め、効率の良い実装を検討するとともに、粒子アルゴリズムの数学的裏付けを行った。 さらに、磁気リコネクションやパルサー物理について、次のような共同研究を行った。1. かに星雲のガンマ線フレアの駆動メカニズムとして、パルサー風中で電流層どうしが干渉して起きるダブル=テアリングモード型リコネクションを提案した。2. 地球磁気圏夜側で GEOTAIL 衛星が観測したデータを解析し、リコネクション領域周辺のイオン=電子分離構造を議論した。3. 両側の磁場・プラズマ密度が揃っていない、非対称型リコネクションの性質を調べた。その結果、磁場が反平行のときのエネルギー変換効率が異常に遅くなることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究に関連する磁気リコネクションの基礎研究やパルサー物理の共同研究で、予想を遥かに上回る進展があり、これらの成果をいくつかの査読論文に公表した。その一方で、当初計画していた衝撃波の基礎物理に関する理論・シミュレーション研究には、十分時間を割くことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
無衝突磁気リコネクションの基礎研究はこれで一段落させるつもりである。H25年度の計画の積み残し及び、H26年度の計画の過半数を消化するために、本格的な相対論衝撃波シミュレーションの実行・解析に全力で取りかかる。
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